513人が本棚に入れています
本棚に追加
1-2
ハジメは気さくで人懐っこかった。それに好きなアニメや読んでいる漫画の趣味がよく似ている。人見知りがちな僕でも知っている共通の話題があって、すぐに打ち解けることが出来た。ハジメは面倒見のいい性格なのだろう。僕が困ってることがあると何かにつけ親切に教えてくれた。
「僕まだ土地勘がなくって大学とマンションの往復ぐらいしかできないんだ」
「じゃあ、今度俺が観光名所めぐりに連れて行ってあげるよ」
「うん。行ってみたい。せっかく在学してるんだからその地域の名所や名物なんかも食べ歩きしたいんだ」
「ええで! まかせといて! それに有名なアニメの聖地巡礼とかも一緒に行こうぜ」
「おおお。それはぜひとも行きたい!」
「よっしゃ! ってことでメルアド交換しよか?」
「ふふ。なんかナンパされてるみたいだね」
「……う。……まぁ、そうやねんけど」
「え? どうかしたの?」
「いや。なんでもない」
やっぱり友達がいるといないとでは全然違った。大学生活が急に楽しくなってくる。軽い冗談を言い合ったりわからない事も相談できて学生として謳歌している気がした。
「なあ、すぐる。悪いけど今週末あいてたらちょっと手伝ってくれへん?」
「うん。いいけど。どうしたのさ」
「週末のオープンキャンパスで藍染体験をすることになったんや。急やったから人手が足らなくて困ってるねん。補助でいいから手伝ってくれると助かるんやけど」
「藍染って。僕やったたことがないのだけれど。それって僕も染めさせてもらえるの?」
「染めてもええよ。すぐるは染物したことないんか?」
「うん。ないよ。でもせっかくこの大学に入ったし染物もやってみたいと思ってたんだ!」
ハジメは染色デザイン専攻科だ。主に衣服に関するテキスタイル関連を勉強している。
父親は有名なデザイナーらしい。だが彼はデザインよりも布自体に興味があるようだ。
「なんや。そんなことなら、もっと早く言うてくれたらいつでも教えてやったのに。そや。今からどうや? 今日はバイトもないんやろ?」
「え? いいの? 他専科の学生が混じったら怒られるんじゃないの?」
「そんな固い事言うようなやつ、うちの科にはおらへんで。それより染めに興味をもってくれる奴なら皆大歓迎やで!」
「そうなの? じゃあ教えてくれる?」
「もちろん! あぁ。可愛いなぁ」
最初のコメントを投稿しよう!