2-1 藍染体験

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2-1 藍染体験

「生の藍染はこの時期にしかできないんや」 「藍染って期間限定なの?」 「そうやないけど、生の藍の葉っぱからつくるのは夏の間だけやねん。普段は乾燥した葉をミキサーにかけて藍汁をつくるんや。微妙に生と乾燥とでは色合いが違ってな……」  ハジメが熱く語る。真面目にこだわりを持って自分の作品を作ってるのが感じられる。 「なんか良いな。ハジメってすごいんだな」 「なんやどうしたん? 俺の良いところわかってくれたん?」 「ん~。そうかも?」 「そうかそうか」  鼻歌混じりのハジメに手を引かれて藍染体験が始まった。  ちょうど休憩時だったのか、他に作業をしている者はいなく、僕はハジメからマンツーマンで教わる事が出来た。 「一番簡単なのは絞り染めかなあ。そこの糸でこの布をぐるぐる巻いてみて」 「糸を巻き付けるの?」 「そや。縛ったとこだけ染まらんと模様になるんや」 「へえ。おもしろそう。こうかな?」 「ああ。そこはもうちょっとぎゅっと強く絞った方がええで」  ハジメが布を持つ僕の手に自分の手を重ねてきた。片方の手で糸の端をもって強く結んでくれる。重ねた手のひらがやけに熱く感じる。 ――――ズクンッと腰が疼いた。 「はっ……」 (なんだ? 一体?) 「すぐる? 大丈夫か? どないしたんや?」 「え? うん。ちょっとぼうっとしてた。えっと。この後は液につけるんだよね?」 「そうや。ほら、ここでこうしてつけるんやで」  藍染の染色液の前に並んで立つとハジメの方が背が高いのがわかる。後ろから僕を囲うような感じでハジメが腕を伸ばしてきた。そのまま僕の手を支えて布を液の中へと降ろしていく。  ちゃぷん。ちゃぷんと濡れた音だけが響く。やけに心臓がどきどきする。 「どうや? 重ね染めしたらもっと濃くなるけど?」 「~~~~! み……耳元で話さないでっ」 「へ? すぐる。顔真っ赤やで?」 (なんだ? 僕どうしちゃったんだろう?) 「なぁ。すぐる……なんでそんなに顔赤いんか……教えてや……」 (すごくいい匂いがする。これはハジメの匂い?) 「ぁ……僕……」  僕が何かを口走る前に作業場の戸が勢いよく開いた。 「おーい! はっじめちゃ~ん! 来たったで~。感謝しいやぁって。あれ? ……俺。お邪魔虫やったんかいな?」
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