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「こいつは俺の幼馴染の朝比奈や……同級生やで」 「どうも……はじめまして。秋葉原すぐるです」  別にやましいところを見られたわけではないのに僕の赤面は治らなかった。ハジメもイライラした様子でいつもよりトゲトゲしい受け答えだ。この朝比奈という青年は僕と同様にオープンキャンパス用の人員補助らしい。ハジメがメールで声をかけていたようだった。 「おや。綺麗な子やね。こんな子おってんな。俺とも遊んでね」  朝比奈は茶色のパーマがかった髪を指に絡ませながらほほ笑んできた。目鼻立ちが整った綺麗な顔立ちで、笑顔だけ見てたら西洋画のようだ。彼もきっとアルファにちがいない。 「黙れ。お前にはもったいない。見るな。すぐるが減るやろ。それ以上寄ってくんな」 「なんや。悪かったって言うてるやんか。イチャイチャしてるとは思わんかったんや」 「イチャイチャなんかしてるかっボケッ! 絞り染めの練習や! オープンキャンパス用のな! 今回担当の先輩らが就活やら資格試験やらで人員が少ないから無理を言って手伝いに来てもらった貴重な、きちょう~な人員なんや」 「せやから俺も助けに来たったやんか。ランチ一回分で手を打ったるで」 「なんでお前におごらなあかんねん」  これぞ関西人のノリと突っ込みなのか? 筋肉質で雄々しい顔立ちのハジメとすらりとしたスレンダー美人な朝比奈。絵に描いたようなイケメン二人が僕の目の前で関西弁で漫才を……いや、ケンカをはじめた。  これはとめた方がいいのかな? 話題を変えてみたらいいのかな? 「あ……あのっ。朝比奈さんも染色を専攻されてるんですか?」 「いいや。こいつはデジタルメディア専科や」 「ふふん、今の時代はデジタルトランスフォーメーション。DXやで。進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていくんや」 「まあな。家に帰る前にスマホから操作してエアコンの予約入れたり、オンラインの注文やQRコード決済もDXやさかいな」 「え? なんだかよくわからないけど凄いね。」 「そうでしょ? そう思ったら今のうちに俺に投資しとけへん? 今年中にバーチャルオフィスを立ち上げて開業する気やねん」 「ご自身の事業ですか? その年齢で?」  同級生ってことは十八か十九歳のはずだ。さすがはアルファというところか……。 「おい、すぐる。本気にするなよ。こいつ、いろいろ提案は持ち掛けるけど、頭の中には常にそろばんが入っとんねん。少しでも自分が損になると思ったら、バッサリ手を切るようなやつやぞ」 「そやで。世の中金や~。金があるもんが国を動かすんや」 「出たな。守銭奴め」  ハジメが頬杖をついて嫌そうに答える。もう僕にはどこからが冗談でどこからが本気なのかが分からない。
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