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7-3
「やっぱりすぐるくんの髪も茶色だね。少しクセもある。ふうん」
「亜紀良さん。ちょっと待って……」
「ふむ。すぐるくん今すぐにDNA鑑定をしたまえ!」
バシッと朝比奈が高塚を叩いた。
「もお! 亜紀良さんは本当にデリカシーがない! 何もかもぶっ飛ばしていきなり鑑定しろなんて。もっと言い方があるやろ。いや。俺も、もしかしてとは思ったけどな。まずはもっといろいろ聞いてみて……」
「じゅん、今のは痛かったで。ちょっとは加減してよ」
「ちょ、ちょっと待ってください。DNA鑑定ってどういうことですか?」
「君らは親子の可能性が高いよ」
高塚がさらっと爆弾発言をする。
「はあ?」
「ええ?」
「君ら雰囲気が似てるよ。髪の質も同じようだし」
「それだけですか? そんなことで?」
何か根拠があって言ってるんじゃないのか?
「それよりもっといい方法があるで。先ほどの態度から見ると草壁さんはすぐるのお母さんの相手だというアルファを知っているんだよね? その人にまずは聞いてみたらいいんじゃない?」
「そうですね。それができれば……でもどこにいるのかわからないのですよ。名前は立花と名乗っていたのですが……」
「立花? どっかで聞いたことがあるな」
ハジメに言われて今朝の事を思い出す。あの名刺……。
「すみません。その人ってよれよれのシャツとか着てる人ですか?」
「いや、普通にスーツとか着こなしていたと思うけど」
「じゃあ違うのかな?」
「どうしたんや。心当たりがあるのか?」
高塚に聞かれ、大学でパパラッチに会った詳細を教える。
「そいつ。以前から張り付いていたんやないか?」
「あり得るな。これは裏がありそうやないか?」
「これは一から調べなおした方が……」
ハジメ父と高塚が顔をあわせて何やら相談し始めた。
「ごめんな、すぐる。親父らこういうの大好きやねん」
「そうですよね。先生も刺激を求められるのがお好きでして……」
草壁も困り顔になっている。どうやら難波父は今期のイベントは終わったので次のコレクションまで時間があるらしい。
「えっと? 僕の母の話しから発展しちゃったんだよね?」
「ああ。そうやねんけどな。あの人らにとっては暇つぶしの推理小説替わりやねん」
ハジメが申し訳なさそうにする。
「……はは。そんな気はしていたよ」
「ごめんな。不謹慎やな。こんなん。すぐるはホンマはどうしたいの?」
「どうもこうもないよ。ただ本当のことが知りたいだけ。別に今更父親を探そうとか言う気もないし。その人に何かを求めるでもないよ」
「そうか。わかった。俺はすぐるが気がすむまでつきあうからな」
「うん、ありがとう」
「っということやけど、草壁さんはどうするんや?」
「……僕も真実が知りたい。どうして梓が僕から離れていったのかを知りたい」
「草壁さんと母に接点があったとわかっただけでも奇遇だったのに。本当に母のことが好きだったんですか?」
「ああ。好きだった。もう過ぎた恋だと思っていたが、君の姿を見てあの時のこと思いだす。こんなにも胸の奥が締め付けられるなんて。なぜ僕はすぐに後を追わなかったのだろうな」
その問いかけに誰も答えてあげることはできなかった。
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