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11-2
「すぐる。綺麗やな」
朝比奈がほほ笑む。いつもながら女神みたいだ。僕は袖が総レースで腰の辺りに切替えがある真っ白なジャケットを着ている。この腰の切替えがたっぷりと後ろに長くてウエディングドレスのような形状をしているのにとても軽い。この軽い生地もハジメの開発したものだ。中にはいているパンツはスリムでくるぶしにスリットがはいっている。ユニセックス的で男女どちらでも着れる式服なんだそうだ。
「……草壁さんが端っこで泣いてはったよ」
朝比奈の指さす方を見ると慌てて柱に隠れる草壁が見えた。隠れなくてもいいのにな。見に来てくれただけでもありがたいと思う。
「そっか。来てくれてたんだね。朝比奈さんも……えっと」
そうだ、もう高塚さんだった。でも今まで朝比奈さんって呼んでたしな。
「じゅんでええよ。これからはじゅんって呼んでや」
「うん。じゅんも今日はものすごく綺麗だよ!」
「はは。ありがとう。今日はいい日になりそうや」
パイプオルガンの音と共に神父が現れ誓いの言葉を互いに交わした。
指輪を互いの指に嵌めあうと誓いの口づけを交わす。
「ふぅ……んんん!」
ちょ、ちょっと。誓いのキスって軽く口づけるだけじゃないの? こんな濃厚なのって。参列者が居るのにハジメったら……。
バシンッ! 隣から大きな音が聞こえハジメの力が緩むと僕はその腕から逃げ出した。
「はぁはぁ……あほ! しつこいっ。息ができないやろ! そういうのは夜にしてや!」
じゅんの方も高塚に攻められてたのだろうな。
「わかった。今夜は寝かせへんからな」
頬に手形をつけた高塚が嬉しそうにほほ笑んでいる。
「ホンマにうちのアルファどもは……。すぐる、嫌になったら二人で家出しよな?」
「うん。ふふふ」
「あかん。あかんで。ごめんやり過ぎた」
「あかん。ちょっと調子にのりすぎただけや」
ハジメと高塚が慌てる様子が面白い。それにオメガの味方が傍にいてくれるのがとっても心強い。
簡単な挙式だったが記念写真もとり、僕とじゅんは感動して涙でぼろぼろになった。
この後は予約してるホテルでディナーをたべてそこで泊まる予定だ。
「高塚さん。今日はありがとうございました。こうして挙式が出来ただけで幸せです」
「いや、いいよ。すぐる君はじゅんと共同で今バーチャルの店舗を数店押し進めてくれてると聞いてるよ。出来ればこれからも力になって欲しい」
「本当ですか?」
「ああ、じゅんも気心の知れた子が近くにいると相談しやすいと思うしな」
「ありがとうございます!僕頑張ります!」
「亜紀良さんありがとう」
「いやこれは僕のためや。じゅんの喜ぶ顔が僕の活力になるねん」
それにすぐるくんなら僕も安心するからねと小声で高塚がつぶやいたのが聞こえた。
「じゃあ今後の皆の未来のために乾杯!」
「「「乾杯!」」」
僕らは祝杯をあげた。先の事などわからないが立ち止まってばかりじゃ何もつかめない。可能性を求めて明日へと歩き出そう。
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これにて3章完結です。明日から番外編。
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