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3-2
「ふうん。でも言うとくけど、すぐる君はオメガの可能性が高いで。俺と同じ匂いがあんたからはする。ハジメに対しても友情以外のもんを感じてるんとちゃうの?」
「違います! そんな……僕は友人に対して淫らな感情は持ち合わせてませんっ」
「へえ。淫らな感情ねえ。あんたほんまにオメガの事何もわかってないんやな。発情期にアルファを目の前にしてしまうと例え望まない相手だとしても身体を開いて求めてしまう。アルファもオメガのフェロモンに狂わされるんや。自分の意思に関係なく体が求めてしまうんやで。それがどんだけ絶望的か。危機感がないあんたにはわからんやろうけどな」
朝比奈の声色が低く冷たくなったのは気のせいではないだろう。
僕の深く考えずに発した言葉が朝比奈の心をえぐったのだ。
「ぁ。ごめんなさ……」
「まぁええわ。今のあんたに何を言うてもわからんやろうからな。ハジメは大事な俺の幼馴染や。だからあんたには金銭関係なしに関わってやろうかと思うただけや。昔からいろいろとあいつには助けられたこともあるからな。まぁ、友達以上の感情がないあんたには関係ないやろうけど……俺はハジメと寝たこともあるんやで」
「えっ……それって……」
僕は目の前がまっくらになった。そうだハジメはアルファだ。朝比奈がオメガということはそういう事もありえなくはない。頭の中ではわかっていても心がついて行かない。
無性にハジメに会いたくなった。会って話したい。何を? わからないでも……。
「僕……ハジメの事が……好き? なのか?」
顔をあげるともうそこに朝比奈はいなかった。
(確か今日はハジメは用事があるって言っていたな。まっすぐ帰れって言われてたし、明日ハジメにあったら今日の事を相談しよう)
ふらふらと足取りも重く校門へ向かう。こんな日は早く帰って寝てしまったほうがいい。
「ぁ。ハジメ?」
校門前でハジメが車にもたれかかっているのが見える。ハジメって運転できたのか? もしかして僕を待ってくれてるのかも? 喜ぶのもつかの間。朝比奈が駆け寄って行くのが見えた。
「ハジメ~。せっかくのデートやのに待たせてごめんやで」
「うるさい。はよう乗れや」
「なんや照れてるんか?」
「あほみたいな事言うとったら置いて行くぞ」
「もぉ~つれないなぁ」
じゃれあいながら目の前で二人が車に乗り込むのが見える。
こめかみがガンガンと痛んだ。
「嘘でしょ? なんで二人で? デートって……」
唖然として僕は車を見送るとその場に座り込んでしまった。
(僕が知らなかっただけで二人はつきあってたのか?)
胸がぎゅうっと締め付けられる。苦しい。自分の中でハジメの存在がこんなにも大きくなっていたのかと驚く。
「秋葉原君っ! 大丈夫かい?」
誰かに支えられた。頭がクラクラする。
「顔色が悪いよ。僕の車に乗りなよ。病院に連れて行ってあげよう」
誰だ? 聞き覚えがある声。……もう誰でもいいや。
「……はい。お願いします」
何も考えたくない。嫌だ。早くあの二人の姿が見えない場所に。ここではないどこか違う場所に行きたかったのだ。
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