ってキミが歌うから

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「けど、クラス委員の女子が、みんなやってんだからちゃんと練習しろよってカンジで。最低限は参加するからいいだろって思うけど。何に決まったってやりたくないやつはいるし。温度差あったってそれはそれで仕方がない。百人いりゃ百人それぞれ趣味も嗜好も違って当たり前だし。それならみんなどこかしら、何かしら、他人と違って当たり前、違うのが当たり前、みんな普通でみんな変人。あるとかないとか、上手いとか下手とか、多いとか少ないとか、早いとか遅いとか。他人と比べて気にするからこじらすんで。マイペースに悩めばいい」  と俺は思っているし、 「友達百人いなくても。百%自分と向き合えば、結構答えは出る」  多数の上辺だけの付き合いするより有意義だと思ってる。なんて、なんか聞かれてもないことまで一人で語ったな、しゃべりすぎた。反省して隣を伺うと、 「私も向き合い枠だよね」  とやっぱり笑っていた。意味を測りかねたが、返事も待たず彼女は続ける。 「もっと聞いていたいから、もっとしゃべってほしいなあ」  君と話すと謎だらけだな。なんでそんな風に笑うかな。 「しゃべれと言われてしゃべれるもんでもないだろう」  なんで、その笑顔にこっちが砂糖菓子を胸のど真ん中に放りこまれた気分になるのかな。甘すぎて驚くほどの。 「いつも何聴いてるの」  スマホの再生リストを見せると彼女がのぞきこんできた。 「リスト占いって知ってる? 上から十曲のうち、七つ入れてる曲が一緒なら相性ぴったりなんだって」 「なんか微妙な数字だなそれ。十曲中七曲でいいのか? ぴったりってほどか? 確率七十%じゃん」  いち、にい、と数えていた彼女の肩が、しょんぼり落ちた。 「六曲かぁ。残念」 「六曲一緒なら十分じゃないのか。半分以上かぶってんだから」 「ぴったりライン、六曲にしとけばよかった・・・」 「って待て。なんだそれ。ホントにあるのかそんな占い」 「今できたの」 「今でっちあげたんだな」 「私ね、コレと、あとコレも好き」  彼女の指が画面をスクロールしていく。もしも顔を上げたらこっちの顔とぶつかりそうで、なんか近いだろと身を引きつつ、なんで相性の話になるのか謎が増えつつ、とりとめなくしゃべるうちに川辺の草が夕暮れに染まり始めた。 「またね」  手を振る彼女と別れて気が付く。また名前聞くの忘れた。
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