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顔についた絵の具を濡れた袖で拭い取る。
滑っていて生暖かい感覚に思わずニヤけた。
閉じられない開けっ放しの絵の具。
それを見つめ美しさに浸っていると――。
そうだ、もう一つ開けてない絵の具があった。
不意に後ろを向く。
そこには今にも泣きそうな開けてない絵の具。
強引に出すの飽きた。
二つ目はナイフでいいかな。
なんて、思った頃には無意識に開けていた。
――ズタズタに斬り裂かれ、声も表情も満足に堪能できず終わった。
次の絵の具に開け方を見せないほうがいい。
なるほど。
新鮮さ欠けるの早いんだ。
勉強になったよ、と絵の具の水溜りで少し遊ぶ。
パシャパシャ、と軽く“ソレ”を蹴り上げたり。
床に広がった絵の具に指を浸し、一部始終を撮影していたスマホを見てオレは嗤う。
「あぁ、どうも。観覧ありがとうございます。今日はこんな感じになりましたが、一つ一つ同じに見えて違って綺麗ですよね。
そこで一つ質問なんですが――こんなオレはイカれてますか?」
真っ赤に染まった手。
その手でオレはカメラに向かって手を振った。
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