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撮影を止め、鼻歌を歌う。
新鮮な絵の具を踏みながらスマホの画角には入らず、そっと置いてある作業台へ。
【真っ白な紙で作った花】
花は紙、茎はワイヤーとフラワーテープ。
絵の具を染み込ませ作品を作るために、アトリエに飾っていた絵の具塗れの花瓶から二つ取り出す。
「さて、今日の花はどんな色かな」
薄く微笑みながら血溜まりにそっと花びらを浸ける。ジワリジワリと白から赤に染まる花びら。真紅に染まり、命を吹き込まれたかのような美しい花にライトに照らす。
「これが見たかった……」
ハハッと笑いながらオレは作業台に戻るや花を潰さないよう、紙で作ったタグに絵の具の入ったガラスペンで日付と性別書く。
【○月○日 女性】
それをワイヤーで巻き付け葉っぱ代わりにするや隣に置いていた棚。開くと一輪挿しになるよう小瓶が並べられており、そこへそっと挿す。
血の香りと腐敗漂う花にうっとり。本日付の花は赤く美しいが日が経った花は茶黒または黒くなっており味を感じる。
「キミはどんな色になるかな。オレを愉しませてよ」
さりげない独り言。
何もなかったように扉を閉じ、散らかった部屋を見つめ溜息をつく。
「さて、勿体ないからアトリエの壁に塗りたくろうかな。何度も何度もやってはいるけど、それも好きなんだよね」
落ちていた腕を拾い、赤黒い壁に塗る。
オレ自身を更に染めながら――。
アトリエも一緒に。
【完】
*書こうか迷った続きです。
本当は白い花が赤くなる映像が見えて、この作品を書こうと思ったのですが、それを隠してしまって申し訳ありませんでした。
【白い花が赤くなる】様が書きたかったんです。隠すのはよくないですね……。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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