香水男子

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 連休明けから、隣の席の男子が香水をつけ始めた。  そこまで強くはないけれど、はきっりと香水と判る匂い。  どう見ても、これまでは美容とかに関心はなさそうだったけど、休みの間に何かあって、そういう方向に目覚めたのかな。  ま、汗臭いとかよりは香水が漂ってる方が寝隣の席の私としてはいいけどね。 * * *  ダメだ。だんだんと、自分でも判る腐敗臭が立ち上り始めた。  不意の事故で、俺があっけなく死んだのは先月。それでもどうしてか、肉体は死んでいるのに動くし意識もある。  だけど体に体温はないし、脈拍も鼓動もない。試しに、少しだけ指を切ってみたが、血が流れることはなかった。  なのに嗅覚は生きていて、日増しに自分の体が異臭を放ち出しているのが判るんだ。  今は香水で何とかごまかしているけれど、それも時間の問題だろう。そもそも、あちこち腐り始めているから、その内て足が崩れるなどして、物理的に動けくなるだろう。  動けるうちはと、足掻いて学校に来たりしてるけど、そろそろ自分がもう死んでいることを受け入れ、お迎えが来てくれるよう祈った方がいいのかもしれない。 香水男子…完
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