第8章 新たな生活と火種※

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「……私達はエドワード様に招聘されるという形でこの国へとやってきました。むしろ仲がよくないと研究に差支えが生じます」  私がそう告げると令嬢達はざわつく者もいれば気に食わないとでも言うように鼻を鳴らす者もいる。だが、目の前の彼女だけは未だ私達を睨みつけている。 「あなた達は研究者ですのね?」 「そうです。私は研究者で薬師の資格も持っています。彼女も研究者です」 「名前は?」 「マルガリータ・カルナータカと申します。そして彼女はルネです」 「ルネです。よろしくお願いします」 「カルナータカ……どこかで聞いたような……ふん、まあよろしいですわ。わたくしはニーナ・バルガス。バルガス侯爵家の娘ですわ。研究は大事ですがくれぐれもエドワード王太子殿下に近づきすぎないように。己の立場をわきまえて行動する事ですのよ?」  ニーナ・バルガスと名乗った令嬢はそう言い残し令嬢達を引き連れて早足で去っていく。 「……侯爵家の令嬢ですってね。マルガリータ」 「カルナータカ侯爵家と同じね」 「嫌なのに目をつけられたわね……」 「行きましょう。気にしすぎてはだめだわ」  研究室には既にフレッグ教授とバンディ様が着席しそれぞれ魔法薬の原料となる薬草を黒い顕微鏡で覗いていた。 「失礼します。遅くなりすみません」  私がそうルネと共にフレッグ教授とバンディ様に向けて謝罪と挨拶の言葉をかける。2人はそこでようやく私達に気が付いたのか顕微鏡から顔を離して目を丸くさせながら挨拶をしてきた。 「それにしてもなにかあったの?」 「ああ、実は……」  私とルネは互いに顔を見合わせ、先ほどの事について打ち明けるべきか考えたが正直に伝える事にしたのだった。 「ああ、ニーナね。ああいうやつなんだよ。それにあいつは兄さんを狙っている」 「え?」 「ニーナ・バルガスは知ってると思うけどバルガス侯爵家の令嬢で、母方は王家の血を引く人物だ。だから僕達とは遠縁の親戚にあたる。ニーナは兄さんと結婚、そして王妃の座を狙っているんだ」 (だからあのような言葉を……) 「マルガリータとルネはニーナ達とは距離を置いた方が良い。でもあっちから近づいてくる可能性も十分ある。その時は遠慮なく僕や兄さんを頼ってほしい。王族からの命令ならニーナも聞くしか術は無いからね」  そこへフレッグ教授も心配そうに眉を下げながら口を開く。 「もし研究に差しさわりがあれば対処しますのでどうぞご遠慮なく」 「ありがとうございます。今の所は特に……ねえ、ルネ」 「ええ、大丈夫です。またその時が来たら相談させてください」 「わかりました。バンディ様念の為王太子殿下には報告をお願いします」 「ああ、勿論だ。ニーナ達はこの王宮学院でも一大勢力だからね。何をしてくるか分からない。警戒しておくのに越した事は無いよ」  バンディ様の目がきらりと光った時。部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。一瞬だけ嫌な予感と言うか背中の産毛が逆立ったような感覚を覚える。 「どうぞ」 「失礼しますわよ」  部屋に入って来たのはニーナだった。
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