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第9章 ニーナへの断罪
突如沸き起こったニーナの婚約宣言。しかもお相手は王太子であるエドワード様。あまりにも唐突の事だったので私達招待客は皆口をあんぐりと開けてしまった。
しかしその婚約書類、果たして本物なのか? という疑いがすぐに胸の中で芽生えたのだった。
「ねえ、ルネ。あれって本物?」
ニーナには聞こえないようにひそひそとルネに耳打ちする。ルネは首を縦に振る。
「私も同じ事思ったわ」
だが、ニーナは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ、皆にエドワード様と婚約する事となったと報告している。
「わたくしはかねてより王太子殿下をお慕いしておりました。その気持ちが殿下に届き、とてもうれしく思っておりますわ」
「ニーナ様おめでとうございます!」
「おめでとう! 未来の王妃様!」
「おめでとうございます!!」
「あらあら皆さん。そうおっしゃっていただき嬉しいですわ」
彼女に祝いの言葉を挙げていない出席者は私達3人だけだ。その事に気が付いたのかニーナがゆっくりとこちらへと歩み寄って来る。
「どうかいたしましたか? ご三方」
(! これはまずい……!)
「ああ、申し訳ございません。私達この国に来たばかりですのでニーナ様がエドワード様とそのような仲である事は全く知らなかったのです。驚いてしまって申し訳ありません」
「ああ、マルガリータさんもルネさんも確かにこの国に来たばかりですものね。驚かせてしまって申し訳ありませんわ」
そういうニーナだったが口元はまるで悪女……もといレゼッタが浮かべるような悪辣な笑みをしているのが見て取れる。まあ、レゼッタよりかは上品さはあるが。
「いえいえ。こちらこそ無知で申し訳ありません。改めてニーナ様おめでとうございます」
「ありがとう、マルガリータさん」
「私からも。おめでとうございます。ニーナ様。どうぞ末永くお幸せに」
私とルネから挨拶の言葉を受けたニーナはにこにこと微笑みをたやしながらその場を後にしようとする。と、ここでバンディ様がニーナの父親に早足で近づいた。
「その婚約書類、見せてもらいたいのだがよろしいか? その婚約書類、本物かどうか鑑定させて頂きたい」
「え、ちょ、ちょっと待ってください!」
「王族との結婚だよね? ならなんで僕には見せられないんだい?」
バンディ様は強引にニーナの父親から婚約書類を奪い取る。ニーナは強引な真似はやめてください! と叫ぶがバンディ様は無視したまま書類に目を通す。
「……これ、王家が用意した書類じゃないじゃん。それっぽく似せた偽物じゃないか」
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