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第12章 性処理※
朝。私は目覚めてベッドから起き上がると傍にいた若いメイドが私の顔を覗き込んだ。彼女の表情から私の体調を心配しているのがすぐに見て取れた。
「お身体はいかがですか?」
寒気こそ消えたがまだ倦怠感と関節痛は残っている。額も触ってみたがまだ少し熱い。だが薬と彼の精液自体は効いている気はする。何もしないよりかは遥かにましだ。
「把握しました。朝食の準備が整っております。いかがしますか?」
「お願いします」
(お腹すいたしそろそろ食べよう)
朝食は野菜スープと丸くて小さめのパン。そしていつもより柔らかめのスクランブルエッグが用意された。まだ食欲もそこまで湧いて来ないのでこれくらいでありがたい。パンをちぎってスープに浸しながら食べる。食事中メイドからはデザートはいるかという質問を受けた。
「フルーツも食べられますか? 熱を冷ます効果があると聞きます」
「あーー……そこまで入らないかも」
「承知しました」
申し訳ないがフルーツまでは胃の中に入りきらなさそうだ。お昼か夕方ならいけるかもしれない。何とか朝食を食べ終えると魔法薬をぐいっと飲みながら昨日の医師の言葉を改めて思い出す。
「魔法薬は1日3回食後に欠かさず飲んでください。それと適宜殿下の精液も飲むように。それと性欲が溜まりっぱなしなのも魔力を出来るだけ循環させて魔力暴走を止める為にも良くはありませんので……よろしくお願いします」
そういう事を言っていたのはしっかりと記憶にとどめて置いている。だが……。
「エドワード様は?」
「ああ、実は王宮の近くで召喚獣が暴れたという報告がございましてつい先ほど鎮圧に向かわれたそうで」
「そうなんですね……」
彼は王太子。四六時中私のそばにいられる立場ではない。それは分かってはいるが本音を言うと少し寂しい。
しかも召喚獣が暴れたとなると大丈夫なのかと心配さもこみあげて来る。
「大丈夫でしょうか……」
「殿下は大丈夫ですよ。ご心配なく」
「え、ええ……」
飲んだ魔法薬が胃の中でじんわりと熱を放っているような気がした。この熱に不快感は無くむしろ元気が湧いてくるような感覚を覚えている。
(やっぱり効いている。このままおとなしくしていよう)
メイドが去り部屋には私だけとなる。まだ倦怠感は残っているのでまたベッドの中に潜り、寝る事にした。なるべく寝て体力の維持と回復に努めなければ。
どれくらい寝ただろうか。目を覚ますといつの間にかメイドとエドワード様が部屋の中に入っていた。メイドは昼食の乗ったカートの持ち手を両手で握っている。
「マルガリータ。起きたか?」
「あ、エドワード様。大丈夫なんです?」
「ああ、ちょっとかすり傷を負ったくらいだ。どうって事はない。それに召喚獣のランクもそこまで高くは無かったからな」
「それなら良かったです……」
エドワード様がかすり傷を負っていたのは左手の甲。回復しつつある今なら治癒魔法も使えるかもしれない。だがあまり今は魔法を使わない方が良いんだっけ。
「本当は今すぐにでも治して差し上げたいのですが……」
「無理はするな。今はマルガリータの回復が最優先だ。気にしないで良い」
そういうとベッドにいる私をゆっくりと起こし、そのまま熱く抱きしめてくれた。彼の力と熱い体温とまだどくどくと昂ぶりを見せている鼓動の音がダイレクトに聞こえて来る。
「あ……その、すみません」
申し訳なさそうにメイドが口を開く。ああ、昼食の時間なのを忘れていた。それはエドワード様も同じだったようで慌てて私の元から離れる。
「あっすまない。マルガリータの事で頭がいっぱいになっていた……」
「いえこちらこそ申し訳ありません殿下。殿下は昼食どちらで召し上がりますか?」
「良かったらここでマルガリータと一緒に頂きたいが……どうだろうか?」
「わかりました。ではご用意いたします」
まず机の上に私の分の昼食がセッティングされた。鶏肉をほろほろと煮込んで刻んだものと丸いパンとサラダにオレンジが用意されている。
「では殿下のお食事もお持ちしますのでしばしお待ちください」
「よろしく頼む」
メイドが一礼してカートを押しながら部屋から去っていった。私は椅子に座って待っているとエドワード様はそうだ。と何やら思いついた様子で語り始める。
「朝は薬飲んだか?」
「はい。飲みました」
「本当は朝マルガリータの元に行ってやりたかったんだがな……すまない」
「いえいえ、お気になさらず。魔法薬も効いているみたいですしそこまで深刻な状態ではないと思います。まだ倦怠感と関節痛は残っていますけど大分ましにはなりました」
「そうか……それなら良かった。だが本音を言うと少し残念かもしれない」
「?」
私が回復していくのが少し残念? どういう事だろうか。エドワード様の事だから私を良く思っていないというのは無いと思いたいが……。
「どういう事でしょうか?」
「あの、その……マルガリータの性処理をしてあげたかったなと、思って……」
そう頬を紅潮させながら私をちらっと見つつ語るエドワード様全体が色気づいて見えてしまう。するとそこへメイドが彼の分の昼食を持って現れたのだった。
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