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道中馬車が止まったりなどのアクシデントがあり王宮に到着したのは夜だった。エドワード様の手を借りて馬車から降りると目の間にはレゼッタがいた。
(やっぱりいたか)
なるべく目を合わせずに馬車から降りる。そしてエドワード様に守られる形で早足で王宮の建物内に入った。とりあえずレゼッタとは関わりたくないし言葉を交わしたくも無い。それはエドワード様も理解しているようでなるべくレゼッタから私を遠ざけてくれたのだった。
また王族は他の国々からも来ているようで、結構人が多い。私はその事を小声でエドワード様にささやいた。
「エドワード様。かなり人が多いですね……」
「そういえば他の国々の王族達とも視察して回る事になってな。確かに休戦になってからは初めてだな」
「そうだったんですね……ここまで王宮に人が集っているのは初めて見ました」
「俺も初めて見るな……圧倒されそうだ」
「大丈夫ですよ。エドワード様は立派な方ですから」
王の間へと側近によって招かれた私達は国王陛下と王妃様に謁見する。軍服を着た国王陛下に紺色の地味目なドレスを着た王妃様がそれぞれ玉座に座っている。
「此度はお招きありがとうございます」
「エドワード殿下よくぞ来てくれた。良き交流の場にしていただけたらありがたい」
挨拶は短いものだった。他にも挨拶しに来ている人々がたくさんいるので仕方ない。挨拶を終えた後は側近によって大広間の一角へと通された。側近曰くこれから歓迎の夜会がはじまるのだという。バンディ様とルネは別室に通されており姿は見えない。更にエドワード様の表情はどこか暗いものだった。
「いかがなさいましたか?」
「……夜会には出たくは無くてな」
「レゼッタお嬢様の事でしょうか?」
「ああ。それにマルガリータを危険な目に合わせたくない」
(優しいな……)
なら無理に夜会に出る必要は無いだろう。だが、彼は王太子。あちこちの国々の王族方や要人との会話も楽しみ情報を得る必要がある。こういう時はどうするのが正解なのか私には分からない。
「マルガリータはどうしたい?」
「え? 私ですか?」
「ああ、君の意見を参考にしたい」
「私は……エドワード様の事を考えますと無理に夜会に出る必要はないと思います。しかしエドワード様は王太子です。夜会に出て様々な方々との会話をする事も公務として重要な事ではないでしょうか?」
「……マルガリータはそこまで考えてくれていたのか」
「ええ、だって王太子じゃないですか。でも私には考えてもどれが正しいのか分からなかったです。申し訳ありません」
「そうか……なら抜け出してしまおうか」
「え?」
そう言ったエドワード様はいつにも増して楽しそうな笑みを浮かべていたのだった。
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