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「レゼッタお嬢様は国王陛下とダンスしていたわ。それを王妃様は嫌そうに見ていた。そうしたらね、あなた最近聖女としての力が落ちてるんじゃない? って言ったのよ」
「それで?」
「それはあり得ないってレゼッタお嬢様は否定したの。そこで私は良い事を思いついた訳よ」
ルネがにやりと笑いながらそう語る。一体何を思いついたのだろうか。ごくりと唾を飲み込んで口を開く。
「何を思いついたの?」
「託宣のやり直しよ」
「託宣のやり直し?」
私だけでなく、エドワード様も同じタイミングで同じ言葉を吐いた。そこにバンディ様も笑みを見せながら口を開く。
「聖女の力が落ちてるって噂が流れているなら改めて神託……託宣を再度受けたらどうかって言ったんだ。そこで聖女である事を証明出来たら噂の否定にもなるしねって」
確かにバンディ様の言う通りだ。託宣を再度受ければ聖女としての力が落ちているという噂を払拭できる。それに彼女が実は魔力が殆ど無いという点も立証可能だ。
「それでバンディ、どうなったんだ?」
「最初はやらなくていいって嫌がってた。レゼッタのお母上も一緒にね。そこに王妃様が何か受けられない事情があるのかって突っ込んで……そこに僕とルネも神託を受けないと噂が流れたままになるけどそれでもいいのか? って言ったんだ。そしたら受けるって渋々賛成してくれたよ」
ルネとバンディ様、王妃様がうまくレゼッタを焚き付けてくれたおかげで彼女は再び神託を受ける事が決まったのだった。神託は明日の午前中、王宮の中庭にて王族や貴族、それに平民も招いて大勢の目の前で執り行われる。なお神託は私とルネも再度受ける事になったようだ。
「私も託宣受けるの?」
「ええ、マルガリータ。比較の為にって言っておいたわ。あなたが本物の聖女である事がようやく広まると思ってね」
「……ありがとう、ルネ。そしてバンディ様もありがとうございます」
「いえいえ。私も一緒に受けるから心配しないで」
「マルガリータ、困った時は兄さんと僕がいるから大丈夫だよ。ね、兄さん?」
「ああ、マルガリータ。俺がいるから安心して神託を受けると良い」
「ありがとうございます」
そうか明日。レゼッタが偽物の聖女で私が本物の聖女である事が知れ渡る。おそらくレゼッタとカルナータカ夫人は重い罪を言い渡されるだろう。おまけにカルナータカ夫人はあの日、神官を殺害している。死刑になってもおかしくはない。
「ねえ、夜会にはその……侯爵はいたの?」
「カルナータカ侯爵様であってる? 侯爵様はいなかったわ。これは貴族から聞いた話なんだけどもう離縁するんじゃないかって噂はあるみたい」
「そうなんだ……でも離縁した所で婿養子よ? 実家に帰れるの?」
「その方向で調整してるとは聞いたわ。神託は見に来るか分からないけど」
「そう……」
父親が来るかどうかは分からない。だが出来る事ならいてほしい気持ちはある。
いずれにせよ、明日。すべてが決まる。
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