プロローグ※

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プロローグ※

 眠ったままの王太子エドワードの息はやや荒いが概ね落ち着いているように聞こえる。肩で息をしている私とは真逆と言えるだろう。 「はあっ……」  ここは野戦病院の一角。重傷を追った者達が簡易ベッドの上で寝ている。その中に特別に作られた個室の中に私と隣国の王太子であるエドワード様がいる。  エドワード様の硬く熱を放つ男根からは精がどくどくと吐き出されていく。私はそれにかぶりつき舌で精を舐め取りごくりと飲んだ。苦みの効いた独特な味と共に、魔力の流れも感じられる。  (これで……収まるはず)  性処理を終えた私は手を水で洗うと、個室から出てカルナータカ侯爵家の屋敷に戻って行った。  朝は早い。今日もカルナータカ侯爵家の屋敷前には庶民に貴族らがぞろぞろと列をなしている。野戦病院から帰って来た私はその様子を屋敷の勝手口から見ていた。 「開門はまだか!」 「はやく聖女様に合わせてくれ!」  カルナータカ侯爵家の屋敷前で列をなしている者達の目的はただ1つ。聖女レゼッタ・カルナータカに自身の病や傷を治してもらう為である。  レゼッタは自身の魔力を込めた薬を渡す事でこれまで数多の民を癒やしてきた。彼女はその功績から聖女として崇められている。王家の者との結婚の話も進んでいるくらいだ。 (早く戻らないと……)  私は勝手口を閉め、階段を降りてある場所に向かう。それは聖女レゼッタを聖女たらしめるモノとして必要なモノである魔法薬を作る場所……工場だ。 「マルガリータ、おかえり。様子はどうだった?」 「ルネ……今日もたくさん来てるわ。早めにストックを貯めないと切れてしまうかもしれない」 「分かった。皆急いで!」 「はい!」  粉末状にした薬草を混ぜ合わせて調合し、術式をかける。出来上がったら小さな空き瓶に詰める。術式をかけるのは私……マルガリータ・カルナータカの役目だ。 「マルガリータ、傷口を塞ぐ薬草がもう切れそうだわ……!」 「そうなの?!」 「ええ……」 「分かったわ。すぐに採ってくる!」  私が麻袋を近くの棚から取り、部屋を出ようとした時だった。 「失礼するわよ。薬は出来ているかしら?」  レゼッタが扉を荒々しく開けて中に入る。 「レゼッタ様、こちらが完成品になります……」  ルネが完成品の入った木箱をレゼッタ付きのメイドに渡した。 「怪我用はこれだけぇ?」 「傷口を塞ぐ薬草が切れてしまいまして……」 「はあ?!」  レゼッタはルネに詰め寄り、頬を叩いた。あまりの衝撃にルネは吹き飛ばされるようにして倒れる。私はすぐさまルネに駆け寄った。 「ルネ!」 「マルガリータ……」 「ふん、お姉様も情けないわね。早く薬草採りに行きなさいよ! ほんと使えないわね!」 「……っ」  私は悔しさを胸に抑え込み、麻袋を手にして工場を後にした。屋敷を出ると人がまだ並んでいて、屋敷の門が開くのを今か今かと待っている。   すると先頭に並んでいた農民の老人が私に声をかけた。 「メイド! 聖女様はまだか!」  彼を皮切りに次々と列に並ぶ人達が声を挙げた。 「おいメイド! 聖女様はまだか!」 「こっちは昨日から待ってるんだ!」 「早くしろ!」  私には何も決定権は無い。扉を開けるのはレゼッタが決める事だ。私は彼らに一礼をして、近くの森に薬草を採りにいく。  森の中は静かだ。人もいないしため息もつける。 「はあ……」  私は薬草を見つけるとぱっぱっと引っこ抜いて麻袋の中にいれる。 「これくらいでいいかな」  多分私の事は、あの列に並ぶ人からするとどうでもいいのだろう。でも私は本当の事を知っている。  本当は……私、マルガリータ・カルナータカこそが聖女で異母妹のレゼッタ・カルナータカには魔力がほぼ無い事を。
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