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【初秋の朝】
「今年の夏は暑かったなぁ、
この頃は朝晩涼しくて嬉しい」
今朝は、早起きをして、コーヒー豆を挽いた。
我々夫婦が好んで飲んでるモカコーヒーである。
窓辺のダイニングに挽きたての
モーニングコーヒーを2セット用意する。
レースのカーテンが早朝の涼風で
ユラユラと揺れて、
その隙間から、差し込む朝陽が
お揃いのマグカップの中のコーヒーが
キラキラと反射光を天井に輝かせている。
「お天気が良いと、清々しいなぁ」
今日から1泊2日で、夫婦旅行である。
「ひずえ、
コーヒー淹れたからね」
「はーい、
いっくんありがとう」
ひずえは、洗面台で、
髪の毛をセットして、化粧をしている。
ひずえは薄化粧なのだが、
さっと軽く化粧をするだけで、
より、一段と、美しさが増す。
美人と言うのは得である。
我が家の洗面台は、比較的広い作りなので
ひずえの化粧ポーチや、
髪の毛をクルクルするドライヤーや、
髪の毛用のアイロンやらを置いても
まだスペースが余る。
その余ったスペースに、
私のうがい薬などを
置かせてもらっている。
ほぼ、ひずえの領土なのである。
歯ブラシ立てには、歯ブラシが2本、
我々夫婦のように寄り添って立っている。
私はこの歯ブラシ立てに立っている
歯ブラシを見るのが好きである。
「ちょっと待っててねー
いっくーーん」
ひずえが、洗面台から飛び出して来た。
艶やかな髪の毛が、動く度に
テレビCMのようにフワッと動く。
とても美しい。
ひずえは、私の自慢の妻なのである。
「コーヒー、ありがとね」
ひずえは、ダイニングに座らず、
コーヒーを立ち飲みする。
エキナカのカフェでも
立ち飲みしている人は見かけないが、
これも、いつもの出掛ける前の
ルーティンみたいなものである。
暫し、
じーっとひずえを観察することにした。
朝の妻は忙しいのだ。
コーヒーを立ち飲みしたかと思ったら、
今度は、スリッパをバタバタと音をさせて、
ウォークインクローゼットへ
飛び込んで行った。
我々夫婦の全ての衣類、靴、その他は
クローゼットに仕舞ってあるので、
身支度もそこでする。
「ヒールがなーーーい」
ひずえが叫んでいる。
昨夜、今日からの夫婦旅行の話をしていて、
ひずえは、お気に入りヒョウ柄のヒールを
履いて行くと、ルンルンな気分で私に話していた。
「ないって・・」
ひずえの一大事だ。
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