子守歌

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翌日、私は園長先生から渡してもらった実の母について書かれた資料の住所に足を運んだ。 東海道線に乗って沼津駅で下車した。 沼津駅からはタクシーを使って、実の母の家まで移動した。 実の母の家に到着した私は、門を入って玄関のチャイムを鳴らすと、玄関のドアが開いて中から男性が現れた。 私が自分の名前を告げて昨日電話をしたことを伝えると、その男性は昨日電話に出た実の母の弟さんとのことだった。 家の中のリビングルームに案内されて、実の母の弟さんから当時の実の母のことについて教えていただいた。 実の母は20年ほど前に実の父と結婚し、1年後に私を身ごもったけれど、私が産まれる前に実の父と離婚した。 その後実の母は私を無事出産したけれど、経済的な事情で私を星の子学園に預けることにしたという話だった。 もともと体が弱い実の母は病気がちで、私を産んで10年後に肺がんで天国に旅立ったという話だった。 話を終えて実の母の位牌と遺影が祀られている仏壇で、私は線香を立てて手を合わせてお祈りをした。 私はこの時はじめて遺影の実の母の顔を見た。 遺影に写っている優しそうな実の母の笑顔を見て、私は率直に今日実の母の家に来て良かったと思った。 私が帰ろうとしたとき実の母の弟さんが、 「よろしければ、これをお持ちください。」 と言って1枚の写真を手渡してくれた。 その写真には、産まれたばかりであろう私を抱きかかえた実の母と私の写真だった。 「よろしいですか?」 と私が聞くと実の母の弟さんが、 「えぇ、かまいませんよ!  今日は璃彩さんにお会いすることができて良かったです。  天国の姉も喜んでいると思いますよ!」 と優しい口調で言葉をかけてくれた。 私は丁寧にお礼の気持ちを伝えて、実の母の家を出て帰宅した。
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