サイアクの出会い

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「痛っ…!」 ギザギザとした鋭い葉っぱにふくらはぎを引っ掻いてしまった。こんなヤブの中を歩き回ると分かっていたら、生足丸出しのミニスカートなんか履かなかったのに。 それにしても五月になったばかりだというのにうだるような暑さだ。 早く見つけないと倒れてしまいそうなんだけれど、こっちで合っているのだろうか…… キョロキョロしながら歩いていると顔になにかが張り付いた。 「やだクモの巣!気持ち悪っ!」 粘つく糸を振り払っていると地面に隆起した根っこに足を取られ尻もちをついてしまった。 ……………み~つけた…………… 「いっ……た~い。もう、サイアク……」 痛さと情けなさで涙が滲んでしまう。私は母と違ってヘタレの泣き虫だ。 ……て、あれ? 今、何か聞こえなかった……? シーンと静まり返る薄暗いヤブの中。 寒気のようなものを感じながらも気にしない気にしないと唱えつつ急ぎ足で奥に進むと、眩しい日差しとともに開けた場所が見えてきた。 「これって、日本庭園?」 竹で編まれた垣根の向こうには真っ白な小石が敷き詰められ、苔の生えた大きな石や枝ぶりの見事な植栽などが曲線を描くようにして配置されていた。 中央にある池ではししおどしが心地よい音を響かせており、色鮮やかな錦鯉が優雅に泳いでいるのが垣間見えた。 見渡す限り、目を見張るほどの立派なお庭である。 俗世とは切り離された静寂と神秘的な香り漂うその空間は、なんとも近寄り難い雰囲気だった。 余程のお金持ちが住んでいるのだろう…… 庶民には無縁な場所だと引き返そうとしたら、池の縁に植えられた松の木に黒とオレンジの入り交じったまだら模様のネコが乗っかっているのが見えた。 あれってまさか……ニャ太郎? ニャ太郎は三毛猫では非常に珍しいとされているオスの個体だ。とても頭の良いネコなのだがイタズラ好きなところがある。 そんなニャ太郎が尻尾をユラユラさせながら錦鯉を見つめていた。体制を低く保ち、今にも食いつきそうな臨戦態勢である。 錦鯉って確か……高いのだとウン千万もするんじゃなかったっけ?? 「駄目ニャ太郎!それエサじゃないっ!!」 不法侵入になってしまうがそれはあとで事情を話して誠心誠意謝るしかない。
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