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って、あれ?なんで真人?
ついさっきまで糸に絡まって身動きが取れずにいたのに……
それになんだかいつもと違う。髪や肌の色素が薄いというか全体的に透けてるというか……
全く状況が飲み込めず思考回路がショートしている私を見て、真人は呆れたようにため息をついた。
「幽体離脱したんだよ。そうしないと助けようがなかったからな。」
「へっ……?!」
幽体離脱っ……体から魂が分離しちゃうアレですか?!
すごいっ……真人ってそんなことも出来るの!!
「最初っからそれをすれば良かったのに!」
こんな奥の手を隠してただなんて、思わず文句を言ってしまった。
「簡単に言うなド素人が!この術はリスクがデカいんだ。霊体のままだと生命線が消えて元の体に戻ることが不可能になる。」
そう言うと頭から伸びる線を指さした。どうやらこれが生命線というものらしい。
指ほどの太さの白っぽい線が30センチほど、頭のてっぺんからゆらゆらと生えていた。
「これっていつ消えちゃうの?」
「数秒後かも知れないし、一週間後かも知れない。消えたら強制的にあの世行きだ。」
数秒後の方だとしたら一刻も早く体に戻らないといけない。
庭を見ると蜘蛛の巣は消え、雑草は根元から全て抜き取られて狭間の穴があった場所には巨大な落とし穴が残されていた。
もしかして真人の体も……吸い込まれたあ?!
「どうしよう、真人の体が無いよ!」
慌てて振り向くとさっきまでいた霊体の真人もいなくなっていた。
もうあの世に強制送還されてしまったのだろうか。
ウソでしょ………
庭を走り回って真人の名前を何度も呼んだが返事はない。大粒の涙がとめどなく溢れてきた。
泣いてる場合じゃないのは分かっているけれど、真人が死んだかも知れないと考えるだけで胸が苦しくなって涙が止まらなかった。
そうだ珀……珀ならなんとかしてくれるかも……!
裸足のまま森へと駆け出そうとしたら後ろから呼び止められた。
真人だと思い振り向いたのだけれども、そこには誰もいなかった。気のせいだったのだろうか……
「下だ下。下を見ろ。」
視線を下げると地面には死んだはずのニャ太郎がちょこんと座っていた。
「……ニャ太郎が、喋った……?」
私の言葉にニャ太郎は違うという風に首を左右に振った。そして嫌そうにチッと舌打ちをした。
「俺だ。こいつの体、ちょっと借りるぞ。」
────────────っ!!!
まま、ま、真人─────────!!
「なんで真人がニャ太郎の中に入ってるの?!」
「仕方ないだろ、緊急避難だ。霊体のままだと生命線が消えるって言っただろ。」
猫になった真人は大きく伸びをしたり尻尾をフリフリさせたり前足で顔を擦ったりしていた。
体と魂のズレを調節しているらしいのだが、その仕草があまりにも可愛いすぎて悶絶しそうになった。
「とりあえずは大丈夫そうだな。」
真人は肉球を見ながら安心したように呟いた。
語尾にニャって付けて喋ってくれないかな……
私達は森の中を通って珀の元へと急いだ。
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