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家に戻り、仏壇にニャ太郎が好きだった煮干しをお供えして手を合わせた。
ニャ太郎…無事に天国に行けたかな。
甘えん坊な性格だし、おっちょこちょいな面もあったから心配だな……
真人を見るとキャットハウスに首を突っ込んでクンクンと匂いを嗅いでいた。
「ねえ真人、私……」
「疲れたから話なら後にしてくれ。少し寝る。」
そう言うと真人は部屋の隅に重ねてあった座布団の上に丸まって寝てしまった。
お母さんとのことがあって真人は陰陽師を辞めたがっているのに、またこんな風に巻き込んでしまった。
真人の苦しみを一緒に背負うとか大口を叩いたくせに、実際私がしたことは真人の足を引っ張っただけ。
いい加減、私と関わるのうんざりしてるよね……
「あーっ、どうしたら真人の役に立てるんだろ~。」
ぶくぶくと湯船に浸かりながら自分の情けなさを痛感していた。
外は日が陰りだし、夜の虫の音が聞こえ始めていた。
あの男の子は一体誰なんだろう───────
元は生きていた一人の人間だったんだよね。
この世への未練があって成仏出来なかった哀れな存在……
あんな恐ろしい蜘蛛の妖魔にまでなってしまう心残りって……なに?
ニャ太郎を殺されたけれど、恨む気持ちにはとてもなれなかった。
なぜあの男の子は私を探していたんだろう。
それを思い出せればあの子も少しは救われるかも知れない。
同い年だったのかな。それとも年下?
どこで亡くなったんだろう……今まで何度か引っ越したことはあったけれど、私のことをずっと追いかけていたのかな……?
長湯で火照りながらもあの子へと繋がる過去はなかったかと必死で思い出していた。
「ちょっと紬!あの庭のバカでかい穴はなに?草むしりをやっといてとは言ったけれど、植木まで引っこ抜いちゃったの?!」
母が仕事から帰ってきたようだ。
庭も綺麗さっぱりな状態だけれど、包丁やハサミなんかも全部穴に吸い込まれてしまっている。これはどう言い訳しようか……
とにかく謝り倒すしかないと湯船から立ち上がったら、風呂場の引き戸がガラリと開いた。
「可哀想にニャ太郎が砂まみれじゃない。洗ってあげなさい。」
……ニャ太郎……じゃないっ………
────────────真人っ!!
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