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「宮田さんは俺の事嫌い?」
単刀直入に聞かれたので、真子は思わずドキッとする。
「き、嫌いじゃないけれど......」
「けれど?」
どうやら拓には適当なごまかしは効かないらしい。
彼は真子がちゃんと答えるまでじっくり待つ姿勢のようだ。
「じゃあ率直に言うね。私と付き合ってもセックスはできないよ」
そのストレートな物言いに、今度は拓が驚いていた。
おとなしくて清純そうな真子から、まさか『セックス』という単語が
出て来るとは思ってもいなかったのだろう。
「セックス......出来ないの?」
「う、うん...ココに悪影響だからお医者様から禁止令が出ているの」
真子はそう言って自分の心臓の辺りを手で押さえた。
「激しい運動は禁止って事か......」
「そうなのかな?」
真子は、セックスが激しい運動であると知っている拓の様子を見て、
急に彼が違う世界の人間のように思えた。
彼はもう既に経験済みなのだろう。
拓はしばらく何かを考えている様子だった。
二人の間に沈黙が続いた後、漸く拓が口を開く。
「いいよ。プラトニックラブっていうのも新鮮でいいじゃん」
「......えっ? いいの?」
「ああ。それにそういう行為がない方が、逆に純粋にお互いの事が分かり合えるかもしれないし」
拓の言う『分かり合える』という意味がイマイチ理解出来なかった真子は、
ついこう言った。
「ごめん......私今まで誰とも付き合った事がないから、そういう微妙なニュアンスが分からなくて...」
「ハッ? 付き合った事ないの? マジで?」
「うん。あ、でも一年の時に三年生に告白された事はあるよ。でも今と同じ事を言ったら、やっぱりいいですって取り消された。だからもう諦めてるんだ」
「諦める?」
「付き合うとかそういうのは......」
「諦めんなよ。俺は取り消したりなんかしないぞ」
「えっ?」
「しなくてもいいから、俺と付き合ってみないか?」
「............」
「駄目か?」
「駄目じゃないけど...でも絶対に続かないと思うよ」
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