4238人が本棚に入れています
本棚に追加
1
キーンコーンカーンコーン......
神奈川県立鎌倉北高校のチャイムが鳴った。
「おいっ、拓! 選択美術始まるぞっ!」
「............」
「起きろよ、拓!」
「ふぁあぁああーーーっ」
長谷川拓は大きな欠伸をした後、
屋上のベンチから起き上がった。
そのあまりにも呑気な様子に痺れを切らした森田敦也は、
「先に行ってるぞ」
「うん、俺も今行く」
拓はそう言って漸くベンチから立ち上がると、
のろのろと階段の方へ向かった。
美術室がある三階まで降りると、
拓と同じように遅れて美術室へ向かう女生徒の姿があった。
スラリとした体型にサラサラの長い髪。
後ろ姿だけでそれが誰だかすぐに分かった。
(確か宮田真子だったかな?)
拓は、人の名前をすぐ覚えるという特技がある。
目の前の真子とは、三年生になって初めて同じクラスになった。
今まで一度も会話を交わした事はないが、美人だったので名前を覚えていた。
そんな真子の事が、拓は以前からずっと気になってる。
人伝に聞いた話だと、
真子は身体が弱く1年生の頃は頻繁に学校を休んでいたらしい。
そんな経緯もあってか、いつも静かで目立たない存在だ。
拓が真子を見かける時は、いつも女友達とつるんでいるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!