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キーンコーンカーンコーン...... 神奈川県立鎌倉北高校のチャイムが鳴った。 「おいっ、拓! 選択美術始まるぞっ!」 「............」 「起きろよ、拓!」 「ふぁあぁああーーーっ」 長谷川拓(はせがわたく)は大きな欠伸をした後、 屋上のベンチから起き上がった。 そのあまりにも呑気な様子に痺れを切らした森田敦也(もりたあつや)は、 「先に行ってるぞ」 「うん、俺も今行く」 拓はそう言って漸くベンチから立ち上がると、 のろのろと階段の方へ向かった。 美術室がある三階まで降りると、 拓と同じように遅れて美術室へ向かう女生徒の姿があった。 スラリとした体型にサラサラの長い髪。 後ろ姿だけでそれが誰だかすぐに分かった。 (確か宮田真子(みやたまこ)だったかな?) 拓は、人の名前をすぐ覚えるという特技がある。 目の前の真子とは、三年生になって初めて同じクラスになった。 今まで一度も会話を交わした事はないが、美人だったので名前を覚えていた。 そんな真子の事が、拓は以前からずっと気になってる。 人伝に聞いた話だと、 真子は身体が弱く1年生の頃は頻繁に学校を休んでいたらしい。 そんな経緯もあってか、いつも静かで目立たない存在だ。 拓が真子を見かける時は、いつも女友達とつるんでいるようだった。
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