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真子は体育の授業の実技は全て見学していた。
この高校の体育の実技は、男女別々で行われる。
その際、拓は度々真子が教師の助手のような事をしているのを見かけた。
球技の時などは、真子はいつもボールを雑巾で拭いていた。
その時の真子の表情が少し寂し気で印象に残っていた。
美術室前の廊下まで行くと、教室からは美術教師葛城の声が響いてきた。
(やばっ、もう来てんのかよっ)
焦った拓は、ダッシュで後ろのドアへ駆け寄る。
その時、ちょうどドアを開けていた真子の身体に全身がぶつかってしまった。
「あっ、悪いっ」
拓のスピードは止まらず、
真子の身体を教室へ押し込むような形で後ろから当たってしまった。
二人がドアからなだれ込んで来たのを見て、教師の葛城が言った。
「おいおいお前ら受験生なのにラブラブしてんじゃねぇぞ。もう授業はとっくに始まってるんだからな」
その途端、教室中からヤジが飛ぶ。
「ヒューヒュー」
「お前らいつのまにそういう関係?」
「イチャイチャしてんじゃねーぞ」
それを聞いた真子の頬が真っ赤に染まる。
それを横目に見ながら拓が葛城に言い返した。
「そんなんじゃねーってば...」
それから真子にだけ聞こえるように言った。
「ごめんな...」
「うん...」
真子は小さな声を出して頷くと、
拓の顔を見ずにうつむいたまま自分の席へ向かった。
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