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その時真子は、斜め後ろの会話を聞いていた。
(長谷川君、建築学科を受けるんだ...)
真子は現在地元の小さな美大受験予備校に通っている。
本当は横浜にある大手予備校に通いたかったが、
高校三年生向けの講座は毎日夜九時まである。
通学の負担と帰りが遅くなる事を考えると、
そこは諦めざるを得なかった。
そして地元の予備校を選んだ。
真子が通う予備校は週三回で、自宅からバスで10分ほどと近い。
身体に負担のかからないスケジュールも、真子にとってはちょうどいい。
正直、大手の予備校の方が受験対策に精通していて有利だと思うが、
真子の場合は、身体に負担をかけないという事が必須だ。
しかし、小さい予備校にもそれなりに利点がある。
少人数制なのでサポートが手厚く、通ってみるとなかなか快適だ。
だから今は地元の予備校を選んで良かったと思っている。
真子が通う予備校にも、建築学科を希望する学生が何名かいた。
そのほとんどが男子学生だ。
建築学科を受ける学生は、デッサンの授業しか受講しないので
すぐに分かる。
(長谷川君はどこの夏期講習に行くんだろう?)
真子はこの学校に美大や建築学科を受験する友達がいなかったので、
拓が建築学科を受験すると知り、少し興味を持ち始めていた。
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