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結婚を命じられること自体は、別に驚くべきことではない。コルネリアは十九歳。結婚適齢期が十代半ばであるこの国では、むしろ少々遅すぎる年だ。現にコルネリアの二人の姉は、十代半ばで結婚している。
それに、皇族の一員としてこの世に生を享けた以上、政略結婚を命じられる覚悟もできていた。
しかし、結婚相手がリシャール・ラガウェンとなれば話は別だ。
「エツスタンの元王子が、わたくしの結婚相手ですか……」
「すまない。お前には、非常に難しい立場に身を置いてもらうことになるだろう。可能であれば、避けたい選択ではあったが……」
セアム三世は深く皺が刻まれた眉間を揉む。
エツスタン公爵領といえば、先の戦争でピエムスタ帝国が支配して間もない、海と山脈に挟まれた北の領土であり、元はエツスタン王国と呼ばれていた地域である。
古代語で「長い冬の国」という意味を持つエツスタン王国に住む人々は、古代の神話に出てくるエルフの末裔とも言われており、独自の文化と精巧な工芸品で知られていた。エツスタン人たちは、細々と、しかし誇り高くその文化を守ってきたのである。
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