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「リシャール様! 貴方様に忠義を誓う私の諫言に、もう少し耳を傾けるべきでは? お言葉ですが、我がブランジェット侯爵家は建国から貴方様エツスタンの王族に忠義を誓った家系! 代々我が家系からは王妃を数多く輩出しています。王族にはブランジェット家の血も流れているのに――」
「血を引くから、なんだ? ブランジェット一族がお前と私の先祖を同じくするからといって、それがコルネリアへの暴言を許す理由にはならない」
さして大きな声を出したわけではない。しかし、若い領主の鋭い声はブランジェット侯爵を黙らせる威圧感があった。さすがのブランジェット侯爵家の親子も、取り返しのつかない失言をしたらしいと気づいたらしく、青い顔をする。
リシャールが、コルネリアを振り返った。
「すみません、コルネリア。貴女に嫌な思いをさせてしまった」
その目には、先ほどまでの冷たい鋭さは微塵もなく、いつもの優しい眼差しが戻っていた。コルネリアは小さく息をつく。
「いいえ、気にしないで。ブランジェット侯爵のお考えも聞けたし、ご令嬢ともお会いできてよかったわ」
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