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コルネリアは、無難に微笑んでみせた。正直に言えば会いたくはなかったというのが本音だが、ここでコルネリアが嫌な顔を見せれば、リシャールはブランジェット侯爵家に何らかの制裁を加えかねない。それでは、せっかくの明るいパーティーの雰囲気がが台無しになってしまう。それだけは避けたかった。
ブランジェット侯爵親子もさすがにここまで言われては引き下がるしかないらしく、苦々し気な顔で去っていく。
コルネリアはそっとリシャールに耳打ちした。
「ブランジェット家はエツスタンにとって重要な家門でしょう? あんな態度をとってもよかったの?」
「コルネリアを守るためなら、どんな相手を敵に回したって平気です」
「でも、私はリシャールがエツスタンで孤立してしまうのは嫌よ」
「大丈夫です。この程度、どうってことありません」
そう言い切ったリシャールの身体が、一瞬ふらついた。コルネリアは慌ててリシャールを支える。
「リシャール、大丈夫?」
「……少し、眩暈がします」
「顔が赤いわ。熱があるのかも……」
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