突然の下命

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 しかし、二年前に北方の海のはるか向こうにあるハンソニア王国とエツスタン王国の間で戦争が起こった。ハンソニアは、不凍港を持つエツスタンを足掛かりにしてソロアピアン大陸すべての覇権を握ろうと企んでいたのだ。  これを看過できないソロアピアン大陸最大の領土を持つピエムスタ帝国がエツスタン王国に加勢し、先の戦争は辛くもピエムスタ・エツスタン連合軍が勝利した。  しかし、先の戦争はエツスタンに深い傷跡をのこした。  戦場の舞台となったエツスタンの地は、目も当てられないほど荒廃した。ハンソニアの野蛮な騎士たちは田畑を踏み荒らし、街や村を燃やしつくしたのである。しかも、かなり徹底的に。  さらに悲劇的なことに、エツスタンは名君と誉れ高かった国王、ヨナソン王とその妻クラウディアを失ってしまった。  エツスタン王国の王族は、ヨナソン王の一人息子リシャールのみとなってしまったのである。リシャールは12歳。政を為すにはあまりに幼い。
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