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そこで、当面の間、ピエムスタ帝国はエツスタン王国を支配下に置くと宣言した。リシャールは表向き、エツスタン公爵という地位を封爵され、エツスタン王国はエツスタン公爵領へとその呼び名を変えることとなった。
この措置はあくまで一時的なものであるとセアム三世は繰り返し宣言したが、それに納得するエツスタン人はほとんどいなかった。それどころか、「混乱に乗じて国を乗っ取った卑怯者」とピエムスタに強く反発する始末。
しかし、ピエムスタ帝国とて、荒廃したエツスタンを放置するわけにもいかない。エツスタン首都オルナにある不凍港がハンソニア王国の手中に落ちれば、次に狙われるのはピエムスタ帝国の広大な領土だ。目下、南の新興国であるラーク王国ときな臭い状況になっているピエムスタ帝国にとって、北からハンソニア、南からラークに挟まれてしまえば、その覇権を大きく損ねてしまうことになる。
セアム三世はコルネリアに難しい顔をした。
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