突然の下命

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「リシャール・ラガウェンは十二歳。さすがに実権を渡すには若すぎる。一方で、ピエムスタ帝国から使者を派遣したとして、あの国は反発を強める一方だろう。そこで、お前にはリシャール・ラガウェンの配偶者となり、リシャールを補佐するという名目でよくあの領土を治めてほしいのだ」 「念のため確認しますが、お父様はエツスタン王国を永久に支配したいわけではないのですよね?」  コルネリアの質問に、セアム三世は白いものが混じりはじめた顎髭を撫でた。 「……あのエツスタンを支配できるとは思わない方がいい。そもそも、ピエムスタ帝国とエツスタン王国は歴史的に敵国同士時代の方が長い。先帝の時代は激しい戦を何度となく繰り返している。我が帝国がエツスタンを併呑したところで、いずれ道を違えるのは目に見えている。かような辺境の地であれば、派兵費も馬鹿にならん。それならば、共生の道を歩んだほうがピエムスタ、エツスタン両国の利益になろう」
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