突然の下命

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「お前にふさわしい夫を見つけようと結婚を引き延ばしてきたが、このような結果になってすまない。お前が帰ってきたあかつきには、お前にはなんでも望むものをやろう。トレヴァスあたりの皇族直轄領をお前に渡してもいい」 「破婚した皇女に皇族領を譲渡した前例はなかったはずですが、よろしいのですか?」 「そこまでしなければ、これから先お前にのしかかる心労と釣り合いがとれぬだろう。……すまない。お前にはなんとしてでも幸せな結婚をしてもらいたかった」  皇帝は肺の全ての空気を吐き出すような、重いため息をつく。 「そんなに気に病まないでください。わたくしはきっと大丈夫です」  コルネリアはしっかりと頷いた。  セアム三世とその妻オリヴィアには、長い間男児に恵まれなかった。今でこそ皇位継承権第一位は第四皇子トビアスであるものの、そんな彼も生まれてしばらくは身体が弱く、典医から「成人まで生きられるかわからない」と言われていた時期もあったほどだ。
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