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コルネリアは澄みきった空を見上げ、同じ空の下にいるであろうまだ見ぬ夫のことを思った。幼いリシャールは結婚のための釣書や肖像の類いをいっさい持っていなかったため、コルネリアに知っている情報はほとんどない。せいぜい、リシャールが第四皇子である弟のトビアス同い年で、七つ年下であると耳に挟んだ程度だ。
髪の色も、目の色も分からない未来の夫に、コルネリアは同情していた。
――ピエムスタ帝国の皇女であるわたくしを、いきなり結婚相手として押しつけられて、リシャールもきっと落胆していることでしょうね。
コルネリアとリシャールの結婚は、本人たちが顔を合わせる前に決まった。
リシャールにとってこれは押し付けられた政略結婚であり、しかも相手はかつて敵対していた大国の皇女だ。本来ならば、エツスタンも断ってもおかしくない。しかし、エツスタンは現在形式上ピエムスタ帝国の公爵領だ。もとより絶対的な権力を持つピエムスタ帝国側からの申し入れとなれば、エツスタン側に拒否権はない。
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