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しかし、多感な年頃である十二歳の少年が、この結婚に反発を覚えないわけがない。多少の抵抗はあるものだと考える方が自然だろう。
婚姻の申し出に対するリシャールからの返事は、三日前に手紙で届けられている。手紙の内容はどこまでも儀礼的で、よそよそしいものだった。インクのにじんだ羊皮紙を何度指先でなぞりながら読んでも、流麗な文字から彼の考えや感情は読みとれず、彼の人となりをその文面から判断することは難しい。
しかし、リシャールがどんな相手であれ、コルネリアは年下の子供たちの扱いにはいささか自信があった。幼い頃からべったりだった第四皇子のトビアスや、親戚の子供たちの面倒を見る機会が多かったのだ。子供達とはあっという間に打ち解ける自信がある。
それに、リシャールは先の戦争で最愛の両親を失ったばかりで、天涯孤独の身だ。悲しみに暮れている彼の側で、寄り添い、慰める程度であればコルネリアにもできるだろう。
――可哀想なリシャールを、うんと甘やかしてあげないといけないわ。
強く決意を胸にしたコルネリアは、ふとこちらに向かってくる足音に気がついた。
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