皇女の騎士

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「コルネリア様、やはりこちらにいらっしゃったのですね」  楠の枝をはらいながら、体格の良い男が姿を現した。皇帝直轄の騎士団員の証である深緑色の騎士服に身を包み、背中の中程まで伸びた黒髪を無造作に赤いベルベットのリボンで結っている。 「フェルナンド!」  親しげにコルネリアがその名を呼ぶと、男は榛色の瞳を少しだけ細めた。  フェルナンド・ソルディ。  彼は先の戦争で大きな勲功をあげた騎士団長ソルディ侯爵の嫡男で、数年前までコルネリアの護衛騎士だった男だ。年はコルネリアの五つ年上の二十四歳だが、次期騎士団長として皇帝の信頼も厚く、今は皇帝直轄騎士部隊の騎士に叙せられている。ゆくゆくは、彼の父と同じように騎士団長にまで上り詰めるのだろう。  不思議なことにフェルナンドには婚約者もいないため、ピエムスタ帝国の貴族令嬢たちがこぞって熱い視線を送っている。 「コルネリア皇女殿下に、ご挨拶を申し上げます。殿下の慈愛が、どうかピエムスタ帝国中に広まりますように」
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