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フェルナンドは自然な動作でコルネリアの手を取り、指の先に口付けをした。護衛騎士を辞めた今も、彼は昔と変わらず騎士の礼を欠かさない生真面目なフェルナンドに、コルネリアは目を細めた。
いつもはとても騎士とは思えないほど紳士的な彼だが、ひとたび剣を握らせれば勝てる者はほとんどいないという。
コルネリアがフェルナンドに初めて出会ったのは、四年前。当時騎士見習いだった彼は、セアム三世じきじきの指名でコルネリアの護衛として叙任された。
フェルナンドはいつも物腰穏やかで、コルネリアの知らないことをたくさん知っていた。フェルナンドが語る街の人々の様子や、お祭りで売っている食べ物の話など、コルネリアは目を輝かせて聞いたものだ。皇女として気を張る生活をしていたコルネリアにとって、王宮の外の話はなにより楽しかった。
そういった経緯もあり、コルネリアにとってフェルナンドはずっと憧れの対象だった。フェルナンドの実直な性格をセアム三世も気に入っており、フェルナンドはコルネリアの有力な婚約者候補だとも囁かれていた時期もある。
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