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「話は聞きましたよ。コルネリア様が、エツスタンへ嫁ぐと。国民の誰もが愛する皇女コルネリア様が戦火で荒れ果てた土地に嫁ぐのですから、みなこの話で持ちきりです」
隣に座ったフェルナンドの言葉に、コルネリアは頷いた。
「わたくしも、やっと結婚することになったわ。行き遅れと呼ばれてもおかしくない年齢だけど……」
「コルネリア様、そのように自分を卑下しないでください。貴女様は、誰よりも素晴らしく賢い方です。陛下もそのことを慮って、コルネリア様にふさわしいお相手を探しておいででした。しかし、そんなコルネリア様のお相手が、よりにもよってエツスタンの元王子とは」
フェルナンドは唇を噛む。その横顔には、皇帝への落胆が滲んでいた。
「そんな顔しないで、フェルナンド。帝国のために、わたくしはエツスタンに行くのよ。皇族として、これ以上ないほどの名誉だわ」
コルネリアは穏やかな口調で言う。しかしフェルナンドの表情は晴れなかった。
「コルネリア様の嫁入りに同行する護衛騎士として志願しましたが、陛下に止められてしまいました」
「当たり前でしょう。フェルナンドは次期騎士団長なんだから」
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