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エツスタンへの輿入れにあたって、コルネリアはピエムスタから十五人の護衛騎士やメイドを帯同させる予定だ。セアム三世が直々に選んだ彼らは、ピエムスタ帝国への忠誠も厚く、仕事ぶりも優秀だ。しかし、帯同する護衛騎士のリストの中にフェルナンドの名前はない。次期騎士団長である彼がこの国を離れることは望ましくないと判断されたらしい。それだけ、フェルナンドは皇帝に期待されているのだ。
皇帝の決定に未だ不満があるらしいフェルナンドの眉間には、くっきりと皺が刻まれている。
「私は心配です。コルネリア様は聡明な方ですが、他人を優先しすぎるきらいがある」
「そうかしら?」
コルネリアは首をかしげて困ったように笑う。フェルナンドは不快そうに唇を歪めた。
「コルネリア様のお相手であるリシャール・ラガウェンは、コルネリア様の七つも年下だそうですね。これではいくらなんでもコルネリア様が気の毒です。エツスタンに子供のお守りをしにいくようなものだ。陛下の決定は、コルネリア様の幸せをなにも考えていない」
固く握られたフェルナンドの武骨な拳が震えた。手のひらに爪が深く食い込み、皮膚を破ってしまいそうだ。
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