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「さすがにわたくしの命まで奪うことはないでしょう。お父様には、この結婚は一時的なものだと言われています。数年我慢すれば、離縁してもらうつもりよ。その後は、田舎に領地をもらって、悠々自適に生活するの。……結婚する前から離婚の話をするなんて、おかしな話だけど」
苦笑するコルネリアの足下に、急にフェルナンドが膝をついた。
「コルネリア様、私と結婚していただけませんか? 私はいずれ侯爵位を継ぎ、ユーブルクの領主になります。僭越ながら皇女様の結婚相手として、不足はないはずです。貴女には、なに不自由ない暮らしをさせると約束しましょう」
ユーブルクは、ピエムスタ帝国の南西に位置するソルディ家の領地だ。肥沃な平原を有し、どこまでも続く小麦畑に沈む夕日が美しいと、何度かフェルナンドから聞いたことがある。
冗談かと思って曖昧な微笑みを浮かべたコルネリアだったが、見上げるフェルナンドの視線は真剣そのものだ。数々の令嬢たちの胸をときめかす榛色の瞳が、真剣にこちらを見ている。
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