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「コルネリア様は、この帝国の至宝です。だからこそ何があっても、私が貴女を守り抜くと誓います。ソルディ家もまた、貴女を全力で守るでしょう。陛下もまた、コルネリア様が私と結婚したいと仰れば、無下にすることはないはずだ」
恭しく伸ばされた手を、コルネリアはじっと見た。
この手を取れば、コルネリアは祖国に残ることができる。皇族としての義務を捨て、気の置けない間柄のフェルナンドと過ごす日々は、きっと心穏やかなものになるだろう。
――フェルナンドがいつも楽しそうに語るユーブルクも、いつか訪れてみたいとは思っていた。だけど……。
差しのばされた手を、コルネリアが取ることはなかった。
「……ありがとう、フェルナンド。貴方はいつだって、わたくしの忠実な騎士ね。でも、お父様の決めた結婚ですもの。抗うことはできないわ。皇帝の意思は、わたくしの意思だから」
「コルネリア様! 貴女は、ご自身のことだけを第一に考えていればいいのです!」
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