プロローグ ※

3/7
前へ
/400ページ
次へ
 まるで本当に血が繋がった姉弟のように、いつも二人は一緒だった。雷を怖いと訴えるリシャールと一緒に、手を繋いで一緒に眠ったこともある。恋愛感情はなくとも、家族のような温かな愛は確かにふたりの間には育まれていたはず。――少なくとも、コルネリアはそう信じていた。  コルネリアを見つめるリシャールは、見たことがないほどに切なげな表情を浮かべている。記憶の中の幼い面差しからかけ離れた、大人びた表情は、見ているコルネリアの胸をどぎまぎさせて、なぜか目が離せない。  ――ダメよ。わたくしは、リシャールと離縁しようとしているのに。……それなのに、惹かれてしまってはいけないわ。  己をなんとか律しようと視線を外したコルネリアだったが、その頬をリシャールは掴みあげた。ふたりの視線が、再び至近距離でぶつかる。  刹那、濡れた唇がコルネリアの唇に触れた。接吻をされたのだと、コルネリアは遅れて気づいた。 「ん、うっ……」  とっさのことに驚いて抵抗しようとしたコルネリアだったが、リシャールのがっちりした腕はそれを許さない。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加