プロローグ ※

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プロローグ ※

「少しずつ陥落させるつもりでしたが、気が変わりました。……貴女が『仮初めの妻』なんかじゃないことを、分からせてやる」  天蓋付きベッドの上で、コルネリアは美しい薄緑色の目を見開いた。  ――信じられないわ。目の前にいる人は、本当にリシャールなの?  五年間の海外遊学を経て、つい先日エツスタンに戻ってきた年下の夫のリシャールに、コルネリアは押し倒されている。  抵抗しようにも、リシャールに頭の上で両手首をまとめて掴まれてしまい、身動きが取れない。コルネリアに覆い被さるリシャールの体躯は堂々としており、立派な成人の身体つきだった。服の上からでも、しなやかな筋肉が見てとれる。  出会った頃のリシャールは、コルネリアよりも頭ひとつぶん背が低かったというのに、今は見上げるほどに高くなってしまった。コルネリアが多少抵抗したところで、彼の身体はビクともしない。
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