いわくつきのスタジオ

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いわくつきのスタジオ

そのスタジオでレコーディングすると、録音したテープに奇妙な女の声が入るといういわくがあった。実際、そこでアルバムをレコーディングしたバンドのアルバムに『殺す』という女の囁きが入っていて、騒ぎになった。そのバンドに女性メンバーはおらず、当日のスタッフにも女性はいなかったということで、本物の心霊現象だと話題となり、そのアルバムは、ネットのトレンドになるくらい騒がれてバズった。 だから、彼女は、そのスタジオで新曲を録ることにした。彼女は売れないアイドルで、何とか地道にライブを続けていたが、ネットでバズるような人気は出ずに、マネージャーから、事務所のサポートはもう当てにできないかもと言われて、そのスタジオの噂を聞き、自分の新曲にその女の声が収録されれば、バズずるかもと期待し、何度もリテイクして、ようやくそれっぽいノイズが入った曲ができると、そのノイズを消さずに新曲として公開した。 目論見通り、その女の声に気づいたファンにより、ネットで騒がれて、トレンドに上がった。だが、それも一時的なもので、彼女の人気に火がつくことはなかった。 結局、事務所との契約を切られて、彼女は失意の自殺をした。だが、その自殺は、無名の地下アイドルの自殺として、少しネットの記事になっただけで、みなすぐに彼女のことを忘れてしまった。 そして、そのスタジオで収録すると、自殺した彼女の恨めしそうな声が入るようになった。
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