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ハイドランジア現象
何かを自分の中に取り入れて、取り出せるようになるまでやたらと時間がかかる。
つまり、とろい。
恩人、と言える人がいる。
いや、人、よりも焦げ茶の垂れ耳の中型より大型寄りの犬、みたいな感じの存在。
おにぎりでおにぎりを流し込もうとして失敗した🐶💦と真顔で言うような。
写真を撮りながら興味を感じたものを貪りまくる旅をする、そんな仲間だった。
生活に無頓着で、でもひたむきで、常に無理をしているのが当たり前で、頭が割れそうに痛くても四日間ロキソニンでねばり、トイレに行くのにまっすぐ歩けなくて部屋中の物をなぎ倒してても「金無いから病院に行かない!」と言うような、まあ…そんな奴だった。
クモ膜下出血だった。
生きている。
使える制度をしらみつぶしに調べて突きつけて、やっと救急車に乗せて、(本人の同意がないと搬送してくんないんだもん)条件に合う病院見つかんなくて「今日仕事いけっかなぁ?🐶」「いけるわけないやろっ😾💢💢💢」なんて言いながらやっと着いた病院でクモ膜下出血判明。
だろーな。症状当てはまりすぎなんだよ。
発症から時間たちすぎて対処できないからって次の病院に運ばれる間「あー、タバコ吸いたい。持ってない?🐶」「ねぇわっ😨💢💢💢」の直後意識混濁および消失。
その後緊急手術にいたるまでもごったごたあったけど、今は車イス太郎と名付けた車イスに乗車して、施設のみなさまにお世話になりながらもりもり食べて、生きている。生命力は強い。さすが元テニス道内八位。
その焦げ茶ワンが回復期でリハビリ病院にいた頃、リハビリで院外の散歩中にアジサイを見てふと「アジサイって英語でなんてったっけ…。」と呟いた。セラピストが調べてくれて「ハイドランジア、ですって」。
それからたまーに抜き打ちできいてくるのね。でもあたし、「ハイ…なんとか?」としか答えられない。悔しくて調べる。でも忘れる。
そのまま回復期が終わってしまって、退院しなくちゃいけなくなり、たまたま最初に見学した施設に奇跡的に入ることができた。
多分半年以上、一年近く?過ぎた頃。
電車に乗って、施設にお見舞いに行く途中、
なんのきっかけもなく、ふと、「あ、ハイドランジア。」と思い出した。
多分、もう忘れない。そう感じた。
よくあるんだ。あの時、ずっと覚えられなかったのに、忘れた頃にあたしの一部になる。やっとかよ。今かよ。って思うヤツ。基本、そんな風にしか物事を身につけられないタイプなのかもしれない。じっくり時間をかけて、あ、そうか、ってなるまで。
つまり、とろいんだけど😨
その瞬間、あたしは、そういうのをハイドランジア現象、と名づけた。
今までも、これから先もきっと何度も起こるであろう、長い時間をかけて消化吸収してあたしの一部になったことを自覚する瞬間に自分だけの名前をつけた感じがして、ちょっと気に入っている。
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