いつか、虹の橋のたもとで 1

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いつか、虹の橋のたもとで 1

瞬間最大家族、犬2匹、猫5匹、人5人だったことがある。 最初に来た犬は首輪をして首輪にビニール袋が結んであったけど、ガリッガリに痩せて目ばかりが爛々とした垂れ耳の茶色い雑種の野良だった。雨の日にヨタヨタと弟に着いてきて、玄関前でオカンに新聞で叩かれても物置の前の木製のスロープに座りこんで雨の中数日間粘った。 今思えば、もう動けなかっただけだったのかもしれない。 多分持ち上げられて川に捨てられたんじゃない?ってほどに抱っこと橋の上、水を恐がった。散歩中に橋を渡るとき、ただでさえ短足でがに股なのに更に車高が下がり、スピードは上がる。それでよく歩けるな、腕立て状態じゃん、と思って見ていた。 最初にありつけたのは妹の残したコーンフレークと牛乳だった。美味しかったんだろう。ギリギリで命をつないでくれた食べ物だったんだから。そのせいか、晩年何も食べれなくなっても温めた牛乳だけは手の平から必死でなめた。その後お腹を下しても、それだけは舐めた。 呆れるほど食い意地がはっていて、何度洗っても臭かったけど、とても優しくて、ちょっと情けなくて要領悪くておバカだけど、我慢強くてとてつもなくめんこい奴だった。 両手で奴の顔を包んで親指と人差し指の間に耳を挟んでわしわしすると、手の甲に垂れ耳がパタパタ当たるのが大好きだった。 年を取ってからは寒いのが嫌で、家の中に憧れて、入れたのは玄関のゲージの中までだったけど、おはようとおやすみの時撫でるとしっぽで返してくれた。 奴がきて19年目、あたしの誕生日、やたらと鳴くからいつもより長く撫でてからベッドに入った。 次の日に、虹の橋をわたってしまった。 誕生日プレゼント、ありがとう。しんどいのに、頑張って生きていてくれたね。 いつか、虹の橋のたもとで、いつもの耳パタパタさせてよね。
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