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(控えめに言って死んだと思う)
ここは聖♡星叶学園の卒業パーティー。
王太子が婚約者である公爵令嬢に有名な「お前を断罪する!」をしている最中に、私はドレスに足を引っ掛けて転んでしまった。
転んだ先は氷の参謀と呼ばれる男、ランティス氏で。慌てて掴んだのが彼の正装のズボンだった訳で。
ズボンが下がると下に着ているお召し物が公衆の面前に晒される訳で。
「フラミンゴ、柄」
スローモーションで顕になったのはフラミンゴの総柄だ。総柄ということは、小さなフラミンゴがおパンツの至るところでポージングをしているということで。
悲鳴を上げるファンクラブ会員の淑女達、怖い者知らずに笑い出す学友達、彼の恐ろしさから青褪めて声も出ない人達、辺りはパニックに包まれる。
私は彼の顔を見ることすら出来ずに逃げ出した。
「し、失礼いたしましたーー!!」
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「お父様、娘は急な病で死にました。不出来な娘をお許しください」
混乱に乗じて逃げ帰った辺境で、私は真っ先に自らの死亡宣言をした。もう社交界には、いや、貴族として存在することすら許されないだろう。
(昔からドジばかりで本当に駄目な私)
人の役になんて立ったことがない。
(何人もの邪魔者を裏で処刑してきたと噂される氷の参謀のパンツを世の中にお披露目令嬢に待つ運命はーー死!)
私は城を出た。
絶対に正体がバレないように髪を切って宿屋でバイトを始める。
しかし、平民の間でも瓦版により例の珍事件でもちきりだった。
*
(し、死んだ)
脱走平民扮装作戦は一週間で失敗した。
私は今、氷の参謀と例の公爵令嬢に呼び出されて王城にいる。
「私、貴女にはとっても感謝しているの」
「は、はぁ」
いつの間にか王太子は失脚、第二王子と彼女が良い仲になっていたらしい。
「本来であれば私の婚約破棄が大々的に笑い物にされる筈だったわ。それを貴女の機転が救ってくれたのよ。あの場をめちゃくちゃにしてくれてありがとう」
「えへへぇ、それ程でもぉ」
私のドジが実は一人の女性の心を救っていたらしい。隣に立つ氷の参謀殿も黙ったまま。
(私、逆に良いことしたんじゃ? セーフセーフぅ!)
*
(あー良かったぁ)
帰り道、スキップをしていると肩を掴まれた。
先程も居た氷の参謀殿だ。
(私のこと、許したんじゃなかったの?)
「それはそれとして。責任、取ってもらおうか」
「え?」
連れ込まれたのは誰も使っていない空き部屋。
え? 私、今からどうなっちゃうの!?!?
ーーおわり
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