USJ

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長男、苺郎は高校の遠足でディズニーランドに、修学旅行でここ、USJに来たらしい。かように現代の高校生にとってはどちらもきっと欠かせない場所。 自分はと言えば高校の頃、券をもらったからと言って友人に誘われ、まだできて間もないディズニーランドに行ったことがある。 USJは当時、まだなかった。 お世辞にもおしゃれとも垢ぬけているとも言えない男二人。おまけにちょっと ひねくれている男二人。友人はその当時、何故か国粋主義にかぶれ、自分は自分で難しめの映画を観ていることを心内で気取っており、そんな自分たちが純粋にミッキーマウスやドナルドダッグのぬいぐるみを見て、楽しく感じられる余地は初めからなかった。 いい思い出と言うよりは、苦い思い出。 それが、自分にとってのディズニーランドなのでした。 今回の旅行の行き先に大阪を提案したのは蕪人だけれど、USJをその中の一つに計画したのは自分。まあ、どの旅行サイトを見ても真っ先に出てくるのがここだし、なにより、当時ディズニーランドを楽しめなかった自分にリベンジを仕掛けたいと思ったのでした。 果たして楽しめるか。 という不安を吹っ飛ばしてくれたのが、その門に近づくにつれ大音響で流れるフルオーケストラのユニバーサルサウンド。不安を消し去るには圧倒的な要素が必要。自分はここでしっかりその世界に吞み込まれたようでした。 手をつないで歩いている蕪人も、あ、あ、と言いながらあちこち指さしている。はは、楽しいならよかった。 f7c21a47-b714-45b6-accd-ae20a711d21d    もっとギシギシに詰まって歩けないような道を想像していたけれど、そんなことはない。適度な距離感。歩きやすい。楽しい。 精巧に造りこまれた建築物が目に麗しい。そして、いかにも楽し気に笑う人たち。ここはいい場所だ。 20234bcf-8d6c-4c22-8a7f-116bd9dfa7a5 ホグワーツ魔法魔術学校。 ハリー・ポッターが所属する学校。 ここが主に物語の舞台になるらしい。 見るとなんだか行列がある。待ち時間1時間とのこと。なんだかわからないけど、行ってみよう。ジェットコースターではなさそうだ。ジェットコースターなら蕪人も自分も乗れない。その時は列から離れよう。 「あ。父ちゃん。昨日の」 「ん?」 蕪人に促され、視線を遠くに向けると、昨日のお母さんと男の子がお城から出てきたところだった。二人笑い合っている。お母さんは昨日よりやや深い青のやっぱりワンピースを着ている。 今日は手ぶらの男の子は自分たちを見つけると手を振ってきた。やっぱり確実に自分たちを認識している。蕪人と自分が手を振ると、お母さんはこちらに会釈して、そのまま向こうの道に消えて行ったのでした。
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