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パールヴァティー
サイズ感。
ミニオンと言うものは、怪盗グルーの膝のあたりでバタバタと走り回り、甲高い声で「ばもちゃ」とか人間語じゃない言葉を話す陽気なやつら。
このでかさではない。
人間が入ったドラえもんのぬいぐるみを見たときも感じた違和感。多分ドラえもんのサイズ感は、実際にはスターウォーズのR2-D2ぐらいが正しいんじゃないかと思う。あんなにでかくちゃ何かの荷物だよ。
でも、それを言っちゃうとこういう場所では楽しめないんだろう。いかん、悪い癖が出た。なんて思ってると。
「このおおぎさでね」
隣に立っているパールヴァティーがつぶやいた、と思うと、恥ずかしそうに言い直して。
「あ。すいません。このおおきさではないですよね、って言ったんです。ミニオンの大きさ、どう思いますか?子供より大きいって」
あはは。
まさか、彼女の口からそんな言葉が。
美人の傍に立った自分はいまだ少し緊張したまま。
SINGのミュージカルを四人並んで観た後、自分たちは無表情で愛嬌を振りまくミニオンたちの前で立ち止まったのでした。ガネーシャと蕪人はミニオンの近くに走って行ってしまったので、ここに二人残された状態。
自分は美人と二人で並んで立って子供達を目で追って、わはは、これは夫婦に見えるね。
美人の横に立つと男は勝ち誇った気分になる。
「確かに。自分もそう思ってました。このサイズじゃない。本来、R2-D2位じゃないかと」
「R2-D2?」
あ。そうか、自分と世代が違う。彼女は年齢にして35歳ぐらい。
それにしてもこっちを見上げる大きな目が眩しい。
広いおでこから反射する陽光が眩しい。
「あ。すいません。スターウォーズのキャラです」
「ああ。わかりました。小さなロボットですね」
「あ。はいはい。まんまるっちい、ロボットです」
「スターウォーズ、このあいだ6チャンネルで観ましたよ」
「TBSですね」
パールヴァティーはきょとんとした顔をしている。
そして、あ、そうか、と手を打って。
「東京はチャンネルが違うんだ」
「え?」
「はは」
「あの。ずっと気になってたんですが、パールヴァティーさん、どちらから?」
「あ。私は市内です」
「市内?」
どこの?
「ええと。その」
「あ。そうでした。青森の市内です。青森。私がスターウォーズを観たのは青森テレビです。ATV。それからあの」
「はい?」
「そのパールヴァティーと呼ぶのはちょっとだけ、めぐせはんでやめてほすい」
めぐせはんでやめてほすい。
「あ。恥ずかしいからやめてほしい、です。私、佐々木真弓と名乗ってます。真弓と呼ばれた方がこう、うれしいかもです」
通称名があるのか。遼太郎と同じだ。
「あ。わかりました。ええと、その、真弓さん。じゃ、ガネーシャ君は?なんて呼べば」
「息子は、健太です。佐々木健太」
普通だ。
「健太は今は人の姿。でも、やっぱり象には愛着あるみたいで、動物園でも一番に向かうのは象だし、SINGで一番好きなキャラはミーナ」
だから、ミーナのぬいぐるみを持ってたんだな。
ミーナはSINGの歌姫。気が小さい引っ込み思案だけれど、マイクを握ってステージに上がると人が変わる。もとい象が変わる。先ほどのステージでも堂々と歌い上げていた。ちなみに日本語版の吹き替えはMISIAが担当しているらしい。
そして、ガネーシャはシヴァの息子で首から上が象の神様。
その位は自分も知っている。
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