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「……だいすき」
その胸にすり寄って思いが溢れるままに囁くと、幸せなのに涙が零れそうになった。
「……翡翠。一つだけ。教えてくれるか?」
そんな翡翠の素直な甘えを両手で受け止めて、一青が言う。
「何?」
もう、早くしてほしかったけれど、こんなふうに睦言を交わす時間も愛おしい。問い返すと、少しだけ、一青は思案するような顔をした。
「俺が自分のものだって、あの人に見せつけたかったんだよな?」
「うん」
一青の問いに翡翠はこくり。と頷いた。子供じみた独占欲は恥ずかしかったけれど、一青がいいと言ってくれたから、素直に答えた。
「なんで? いつも、遠慮するのに。ほら。静さんのときだって、あんなに遠慮してたのに」
一青の青い目がじっと見ている。
本当に気付いてないのだろうか。翡翠は思う。それくらい翡翠にとってはそれは、当たり前の答えだった。
「だって……静さん。叶うとか、叶わないとかじゃなくて、ちゃんと真正面から正々堂々と勝負してくれたから。あんな綺麗な人があんなに一生懸命になってたら、勝てないかもって、思うよ。カッコいいもん。
でも、あんなふうにこそこそと一青のこと盗み見るような人には渡さない。だって。俺のが絶対に。一青のこと好き……え」
答えは最後、途切れた。
一青がぎゅっと抱きしめて、深い口づけをしてくれたからだ。
くちゅ。と、小さな水音をさせて、一青の舌が咥内に入ってくる。少しだけ乱暴なキス。がっついているのだと、分かる。分かるのが余計に、翡翠の身体を熱くさせる。
「ね。翡翠。悪いけど。俺には無理。正々堂々と勝負を挑まれたって、絶対に誰にも渡さない」
唇が離れると一青が、そんなことを呟いて、一青は、くるり。と、翡翠の細い身体を自分の方へと向けさせた。ぱしゃ。と、水が跳ねる。バランスを崩して、翡翠は一青の胸に身体を預けた。
「翡翠は全部。俺のだ」
する。と、その手が翡翠の背中を滑って、双丘の間のソコに触れる。
「……あ」
いきなり核心に触れられて、翡翠の細い身体がびくり。と跳ねた。白い肌がほんのりと赤く染まり、普段は見えにくくなっている約款が浮き上がる。
「……ン。あ……そ……だよ……。おれも……一青のだ。誰にも……渡さないで?」
甘くなる声を隠すことなくすり寄ると、翡翠を抱く一青の手にさらに力がも凝った。翡翠を片手で抱きしめたまま、その指先がひっかくようにソコを刺激する。その度に翡翠は身体を小さく痙攣させて反応を返してしまう。身体が期待してしまっていることをとても隠すことなどできなかった。
「あ……ん。や。一青……も……あっ。いじわ……ぁ……ふ。ちゃんと……し」
何故か入り口をうかがうばかりで先に進んでくれないじれったさに翡翠が懇願すると、一青はまた、翡翠の耳元に唇を寄せた。
「やくそく。覚えてる?」
そして、微笑む。艶が滲みだすような表情だった。
くらり。と、眩暈がする。
「……ん。おぼえて……る」
帰る前にあの場所でした約束を思い出して、翡翠はほんのりと染まっていた頬をさらに赤くした。
「約束。……守るよ?」
恥ずかしさに伏し目がちになって言うと、ざば。と、水音を立てて、一青がバスタブの縁に腰かけるような格好になった。目の前に一青の半ば立ち上がりかけたソレが露になる。こんなに明るい場所でまじまじと見つめたことなんてなかったから、思っていたよりも大きいことに翡翠の喉が小さく上下した。
「翡翠がしてくれるんだろ?」
濡れたままの髪に手を入れて、顔を上げさせて、一青が言う。その表情が予想以上に雄の顔をしていることに、ずくん。と、身体の奥から何かが湧き上がるのを感じた。
「上手くできないと思うけど……ごめんね」
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