はなびら 8

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はなびら 8

 ゆっくり、狭い入り口を押し広げながら、ソレは翡翠の中に侵入してきた。十分に解したつもりだったけれど、キツイ。痛いというわけではない。翡翠の身体はもう、一青の形になっている。それでも、その圧迫感に翡翠は眉を寄せた。 「……ぁ……あ……うくぅ……お……おき……」  喘ぎともうめきともとれる声が唇から漏れる。  一青をその質量の半ばまで受け入れたところで、翡翠はそれ以上進めることができなくなって、一青の首に抱きついた。 「翡翠……?」  耳元に一青の甘い声。少し苦し気だ。身体の中に収めた一青が脈打つのが伝わってくる。固くて熱い。もっとうまくやれると思っていたのに、上手にできなくて翡翠の瞳の端に涙が溜まった。 「……ぁ……や。まって……っ。うごかな……あん」  足に力が入らない。ふるふる。と、震えて、今にも力が完全に抜けてしまいそうだ。  そうなってしまったら、どうなるか想像して、怖くなる。 「……ひすい……。まだ途中だよ?」  する。と、一青の手が翡翠の背中を撫でる。身体の全部が敏感になっていて、そんな微かな刺激で足から力が抜けそうになってしまった。 「ダメ……っ。や……だ。おれが……するか……あっ」  全部翡翠がして?  と、請われて。  いいよ。  と、応じた。  だから、全部。今日は全部してあげたい。  翡翠は受け入れる側だけれど、自分が男だという矜持を捨てたわけではない。恋人を自分の手で守りたいと願うのは、雄の性だと思う。大切な人が覗き見られていた不快な気持ちを、恋人である自分が消してあげたい。 「……一青……は。うごいちゃ……んっ。は……ダメ」  そう言って、翡翠はぐ。と、腰を落とした。ずず。と、強い抵抗を受けながらも、それは少しずつ奥へと押し入ってくる。 「……やば……、翡翠。すげえエロい。可愛い」  一青がため息のような声を漏らすから、一体どんな顔でそんな声を出しているのかと、視線を移すと、苦し気に眉を寄せた一青の視線が翡翠の何一つ隠せない身体をじっと見つめていた。まるで、視線で愛撫されているようだ。堪らない気持ちになった瞬間に、ぴくり。と、翡翠の前も反応してしまった。 「見られるの。すき?」  そんな心の中の変化に気付かれてしまったことに、また、翡翠の顔が一気に赤くなる。 「……そ……んなじゃ……っ」  言葉では否定するけれど、身体は正直だ。意地悪をされた途端に、無意識に後ろは一青を締め付けてしまう。その上、先端にはぷくり。と、先走りが滲みだしてしまって、何も隠すことなんてできない。 「嘘つきだな」  つ。と、一青の指先が上を向いた翡翠の前に触れる。爪の先で軽くひっかくように嬲られて、翡翠の細い腰が思わず逃げる。 「あ……っ。アアっ」  その途端に、中の弱い場所に一青の固いものが掠めた。 「やっ。あ。だめっ……ああん」  その刺激で堪えていたものは崩れてしまった。がくがく。と震えてようやく身体を支えていた足から力が抜ける。
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